綾香緊縛
Please, Make me your...

「ほら…じっとしてないと、危ない」

みじろぎした私を軽くにらんで、神くんは一度はとめた手の動きを再開した。
きし、と小さく軋む音をたてて、どんどん私の体は自由を奪われていく。
後ろに回された両腕。
上下を押さえ込まれて突き出すように形を変えた乳房。
そして、肌に食い込んでいく力強い感覚と、淡々とした神くんの縄の扱いに、
頭の中が真っ白に痺れていくみたい。

「痛かったらすぐ言うんだよ」

優しいまなざしとは裏腹に、手から繰り出される縄は容赦がない。
やがて、身じろぎすらできないくらいかたく縛り上げられた私の体は、
決して自分の自由にならない
神くんの思うままになるただのモノへと変化していく。
自分の体なのに、自分では何一つできない。
それはとても恐いことだけれども、
でも今までのどんな瞬間よりも、自分が神くんのものであることを
強く感じることが、できる。
私の体は、私のものではない。
曖昧さの何一つない、ゆるぎないその強さが、嬉しい。


こんな風に感じてしまうのは、おかしいのかな。


でも、私は足の先から頭のてっぺんまで、そして思考のすみずみまでも、
一部の隙もなくく神くんだけで満たされている、
その瞬間の焼ききれるような恍惚感を覚えてしまっている。
どんなときも、無意識のうちにそれを望まないではいられなくなってしまっている。
強く抱きしめられていると錯覚してしまいそうな、甘い拘束感。
魂ごと、神くんに全てをからめとられたまま、逃げることすら考えられない。

「よ…っと。ん、きれいにできた」

きゅ、と体ごと振り回される動きがやんで、
ベットに転がされている私の視界に神くんの笑顔が入ってきた。
もう私は、自分の手を使うことも、
自分で起き上がることも、
足を閉じることもできない。
トロトロに溶けてしまったそこを隠すこともできず、
ただ神くんの望むままの私の姿でそこに居る。

「…綾香さん、縄が似合うね。
あちこちに食い込んで……丸見えになって、すごくやらしい。
かわいいよ」

かぁっ、と体中に火照りが走る。
同時にあちこちに食い込んだ縄を強く意識して、
唇からあえぎ声にもにたため息が漏れる。


縛られて、嬉しいのは、そう望むのが神くんだから。
神くんのものでいることを望む私がいるから。


そして私の唇からは、甘い声だけがこぼれていく……。