「ところで、めぐみちゃんの初めてのキスって?」 ベッドの中、コトが済んで落ち着いた彼女に、聞いてみた。 こういう関係になって三度目、『初めての男』ではあるけれど、 それ以前の事もちょっと気になる。 心配・・・と言うより、好奇心かな? 腕の中で、彼女が顔を上げる。一瞬、見つめ合い、それから 彼女は頬を染め、目を伏せた。 「いきなり、なんて事を言うんですか?・・・恥ずかしい」 バイト先の先輩だから、丁寧に話すんだろうと思っていたが、 付き合うようになっても変わらない。家の中でもこんな風らしい。 「・・・言わなくちゃ、いけませんか?」 「うん、この際、隠し事はナシ」 ちょっと意地悪く答えた。彼女の頬が更に紅くなる。 この表情が二番目に好きだったりする。(一番は笑顔でしょう) 「えっと、高一の時・・です」 「その頃の彼と?」 「ぃぇ・・・好きになったのはそのあとなんですけど・・・ 二年の先輩でした」 ふ〜ん、キスから始まった恋か。そういうことも・・・・・ ・・・・・・・・あれ、待てよ。 「あのさぁ・・・めぐみちゃん、女子高だったよ・・・ね」 |
■ ファースト・キス 陽向猫様 お、落ち着け、自分。こっちから振った話だろうが。 第一、百合物を読むのは好きだろ? (いや、それはそれ、まさか彼女が当事者とは、ねぇ) 内心の動揺を悟られまいとして、彼女に目を向けると、 ちょっと怒ったような顔で見つめ返された。 「だから言いたくなかったんです。・・・でも」 目を閉じて一息つくと、見たことのない真剣な表情で。 「私には大切な想い出だから・・・たかさん、笑わないで 聞いてくれますか・・・?」 そんな顔されたら、ね。むしろ恥じるべきは自分だと思う。 だから口には出さず、ただ頷いた。 「高校に入ってすぐ、私は風紀委員に選ばれました。そんなに しっかりしてるわけじゃないのに、可笑しいですよね。 ある日、校門で遅刻のチェックをすることになったんです。 でも気分が悪くなって、人とぶつかって倒れちゃいました。 気がついたら保健室のベッドに寝ていて、一緒の係だった 先輩がキスしてきたんです。 ただもうビックリして・・・・・ 『眠り姫は、やっぱりキスで起こさなくっちゃね』 なんて言われて、怒りそうになったんですよ。でもね。 その時の先輩、ニコニコしてたけど涙が滲んでて・・・ こんなに心配してくれたんだって思ったら、何だか嬉しくて。 ほんとに突然、その先輩のこと、好きになっちゃいました」 語りながら、幸せそうな彼女。昔の事なのに、ちょっと妬けて しまう。それが顔に出てしまったらしい。 「たかさん、そんなに気になりますか?」 「・・・うーん、まぁね。わかっちゃった?」 「ええ。好きですから」 時々、大胆なんだよなぁ。言った本人も後から紅くなってる。 「・・・・・・・・委員会では副委員長で、面倒見が良くて、 そばにいると暖かくて。今でも好きです。 でも、たかさんを好きなのとはちょっと違うみたいです」 一つ一つ、言葉を選ぶように。ゆっくりと口にする。 「お姉さん、って感じでしょうか。私、弟はいますけど、上は いませんから。あんな風になりたいって、理想のお姉さん。 先輩から見ても、妹だったんでしょうね、きっと。 キスもそれっきり・・・・・・・・でも先輩が卒業する時、 私からキスしました。それで笑ってお別れできたんです」 お姉さん、か・・・・・ 「だから・・・ほんとのファーストキスは、たかさんです」 また頬を染め、彼女は目を閉じた。そして・・・ もう数え切れない、でもその度に胸が熱くなる・・・ そんなキス。 「ところで、たかさんの『初めて』はいつでしたか?」 「・・・ん?中一ん時、同級生と」 「ふ〜ん、おませだったんですね・・・・・え? たかさんって、中学から男子校じゃ・・・・・」 ・・・・・・・・・・あ。 <2001.11.02 UP>
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