■ ふたりは兄妹 〜裏切りの肛虐初体験〜
darkover様


 犯すなら今夜しかない。ユウはそう決心した。
 父さんも母さんも揃って長期出張、我が家は二人きり。
 ずっとずっと昔から、毎日一緒に暮してきた兄妹だ。そんな劣情を抱く事が許されないって事くらいは、もちろん自分でも分かってる。近親相姦は言うまでもなく「罪」だ。
 幾晩も悩んだ。他の相手とも寝た。それでも腹の底に巣食う欲望は少しだって安らぎはせず、むしろ強まりさえした。
 たった一度でいい。したい。姦りたい。犯したい。
 獣じみた情動は、日増しに強まるばかりだ。
 そんな思いも露知らずリビングに座っている、意中の「獲物」に目を向ける。短く調えられた艶やかな黒髪、染みひとつも見つけられそうにない真っ白な肌、漫画の登場人物みたいに形のいい眉。
 マコト。血の繋がった兄妹。
 見ているだけで下腹が熱くなってくる。今すぐにでも襲い掛かりそうになる自分を、「駄目だ」と叱咤しなければならない。
「それじゃ、先にお風呂入るよ?」
 不意にマコトが声を掛けてきた。風船ガムのように膨れ上がった妄想を掻き消し、もつれる舌で慌てて返事をする。
「……あ、うん。お先にどうぞ」
 ユウは舌を伸ばして、唇の端から垂れた涎をぺろりと舐め取る。
 さあ、今夜が、年貢の納め時だよ。



 マコトが浴室へと消えたのを見て取ると、ユウは自分の着衣を脱ぎ捨て、一糸纏わぬ全裸になった。ソファに深々と腰を下ろし、脱ぎ捨てた着衣のポケットから、しわくちゃになったマルボロの箱を取り出す。安物のジッポで火を点けて吸い始めると、狭いリビングは、少しずつ煙草の臭いで満たされていった。
 ユウはそのまま瞼を閉じて、「獲物」の到来を待つ。
「……臭うよ。ユウちゃん、また煙草なんか吸って」
 リビングの天井に紫煙の雲が掛かった頃、浴室の方からマコトの声が響いてきた。どうやらニコチン臭は、リビングの外にまで広がっているらしい。
「ほんと父さんの悪い癖がユウちゃんにまで……ひゃあ!」
 ぶつぶつと文句を言いながらリビングに踏み込んできたマコトは、パジャマのボタンを留めていた両手でとっさに顔を覆い隠し、上ずった悲鳴をあげた。
「ちょ……なんで裸なの? 服着てよ服、早くっ」
 ユウは無言のまま煙草を灰皿に押しつけ、ソファから立ち上がった。ゆっくりと一歩一歩、マコトの側へと近づいていく。
「セックス、したい。もう我慢、できない」
 ユウは言葉を区切りながら告げた。マコトが顔を覆ったまま、逃げるように一歩退く。指の間から覗く頬は、湯上がりとは別の火照りで紅く染まっている。
「冗談、だよね? ユウちゃんとは、実の兄妹なんだよ……」
 ショックのためか、普段よりもずっと弱々しい声でマコトは訴える。しかしユウは「そんなの関係ないよ」と短く言い放ち、さらに一歩、足を踏み出した。もう手を伸ばせば、マコトの濡れ髪に指が届く距離だ。
「昨日の夜も一昨日も、その前もしてたよね」
 唐突なユウの言葉に、マコトはびくりと肩を震わせた。
「……な、何を?」
「隣の部屋に聞こえてないと思ってるの? 毎晩毎晩いつもオナニーしてるでしょ。全部、聞こえてるよ……それに、ほら」
 リビングの真ん中にある机へ向けて、ユウは顎をしゃくった。机の上にはマルボロの箱と、そして細い棒状の器具が置かれていた。
「そ、そんな……どうしてっ?」
 驚きの余りマコトは顔を隠すのも忘れて、つぶらな瞳を大きく見開いた。ユウはくすくすと、揶揄うように笑った。
「エロ本じゃあるまいし、ベッドの下なんて、誰にでも思いつく隠し場所だよ……ねえ、これで何してるの。教えてよ」
 指程度の太さがあるシャフト、一定の間隔でつけられたボール状の隆起。それは、肛門を責めるための、不恰好で淫猥な玩具だ。
「これ使って、お尻でオナニーするんだよね?」
「ユ、ユウちゃんには……関係ないよっ!」
 マコトは羞恥に震える唇を噛み締め、搾り出すような声で言い放つ。するとユウはまた、楽しげな笑みを唇の端に浮かべながら、
「ほんとに?」と、問い返した。
 兄妹の視線が交錯する。たっぷり30秒ほどの緊張を経た後、マコトの方が目を伏せた。何か言いたげなマコトに向かって、猫撫で声でユウが追い討ちをかける。
「怒らないから言ってみてよ。ほんとに、関係ないの?」
「……あの……で……して……」
「そんな小さな声じゃ、聞こえないよ」
 マコトは泣きそうな顔で、ユウの問いに答えた。
「ユウちゃんで、してる……ユウちゃんのこと考えて、してる」
「は、やっぱりね」
 ユウは満足げに呟くと、ひょいと手を伸ばして、マコトの肩を抱き寄せた。しっとりと濡れた黒髪から、シャンプーの匂いが漂ってくる。パジャマ越しに触れるマコトの肌は、かすかに震えていた。
「さ、こっちに来て」
 ユウの唇からマコトの耳へ、穏やかな声が澱みなく流れ落ちる。
「来て。何も……心配は要らないよ」
 そして兄妹は消え入るような吐息を吐き交わしながら、ソファに身を横たえた。



 ユウの手が巧みにパジャマのボタンをひと撫ですると、マコトはあっという間にパンツ一枚を残すばかりの半裸にされた。湯で桜色に上気したマコトの肌が触れるたび、ソファの革生地に仄白く跡が残る。
 マコトの上に覆い被さる姿勢になったユウは、眼前で露わになった白いうなじへと、吸いつくようなキスを施す。固く閉ざされた瞼とは裏腹に、マコトの唇は喉からまろび出る微かな喘ぎ声によって、自ずから開かれた。
「だ……め、だめ……」
 無論、その弱々しい拒絶には、ユウを思い止まらせる力などない。むしろ官能をくすぐられでもしたかのように、ユウは首筋から胸元、そして強張り始めた小さな乳首へと、滑らかに舌を進めていく。マコトの乳首としばし戯れた後で、ユウは快感とくすぐったさに震える兄妹の胸に、そっと頬をすり寄せた。半ば勃ち上がった乳首が頬を押す感触を味わいながら、火照った肌から染み出る石鹸の香りを吸い込んでいく。
「いい匂い」
 マコトは応えず、ただ熱く湿った吐息を狂おしげに紡ぎ出すばかりだった。ユウは相手が瞼を閉ざしているのをいい事に、マコトの上で身体の向きを回転させた。
「すっごく感じやすいんだね……でも、まだまだこれからだよ」
「……ユウちゃん……ユウちゃあん」
 息も絶え絶えに兄妹の名を呼ぶマコトの顔に向けて、ユウは自分の腰をゆっくりと下ろしていく。
「舐めっこ、しよう。一緒に気持ちよくなろうよ……ね?」
 早くも抗う気力を失ってしまったのか、マコトは眼前に突き付けられた兄妹の性器を、ただ呆然と見詰めた。
「こんなの、いけないよ……ユウちゃん……いけないよう」
「そうだよ。いけない事だから、したくなるんだよ」
 ユウは静かな口調でそう断言すると、マコトの性器に舌を伸ばした。少しだけ湿ったピンク色の粘膜を、暖かく濡れた舌先がひと掃きする。今だかつて経験した事のない感触に、マコトは怯えたような喘ぎを漏らした。しかしその声の中には、隠しようのない悦びの色も織り込まれている。
「ほら。したくなるよね? 舐めたくなる、よね?」
 ユウはそう言い募りながら、マコトの性器からじわじわと滲み出てくる透明な雫を、丁寧に舐め取っていく。小さく形のいいマコトの尻が、その都度ぴくぴくと震えては跳ねた。
「舐めてくれたら、もっといっぱいしてあげるよ」
 揶揄うようなユウの言葉に、マコトはとうとう翻意したようだ。膨れ上がった羞恥心を、覚えたばかりの快楽で押し殺しながら、マコトは恐る恐る口を開いた。兄の舌が妹の花弁へ、妹の舌が兄の勃起へと伸ばされる。兄妹は全く同時に、互いの性器を唇に収めた。ふたりの喉を震わせる悦びの声が、低い振動となって互いの秘所へと伝わっていく。
 堰を切ってしまった濁流のように、兄妹は激しく口淫を交わし合う。赤く腫れ上がったクリトリスを、肉襞をひくつかせながら収縮する膣口を、反り返り張り詰めたペニスを、袋に収まった一対のボールを、ふたつの舌が余すところなく舐め回す。ふたりの股間は多量の粘液と唾にまみれて、てらてらと光っている。
「我慢しなくてもいいんだよ、ほら」
 ふと意地悪く笑ったユウは、マコトの性器を吸い立てながら、そのすぐ下で息づく小さなすぼまりへと指を這わせた。
「や、だめっ、そんなとこ……汚いようっ」
「汚くなんてないよ。自分で毎晩いじってるクセに……こうかな?」
「ひぁ、あ、だめ……ああっ!」
 かたちばかりの抵抗を見せるマコトに構わず、ユウは再び性器を舐め啜りながら、優しく指先をくねらせた。性器と肛門を同時に責め立てられたマコトは、過剰過ぎる快感にぽろぽろと涙を零しながら喘ぎ、そして呆気なく果てた。
 マコトが絶頂の瞬間に迸らせた分泌液を一滴残らず吸い尽くすと、ユウは机の上に転がしてあったアナルバイブを手に取った。
「まだまだこれからだって……言ったはずだよ」
 ユウはバイブの先端をマコトの肛門にあてがい、ゆっくりと挿し込んでいった。達したばかりで力が抜けているためか、それとも普段から慣らしているためか、その小さな穴は節くれ立った器具を難なく受け容れていく。
「んあぁ……や、やめてユウちゃん、こんなの、こんなのひどいよう」
「……ひどくなんかない」
 拗ねたように唇を尖らせて断言し、ユウはさらに深く器具を挿し込んだ。
「こんな、いやらしいもの持ってる方が悪いんだよ。こんなの使ってるから……こんなので毎晩毎晩、気持ちよくなってる方が……悪いんだよっ!」
「そんなこと……うあっ! ひぁ、あ、んあああっ!」
 樹脂製のシャフトが潜り込むにつれて、マコトは痙攣めいた身震いを見せる。それは苦痛などではなく、純粋な快感によって引き起こされたもののようだった。唾液に濡れた唇から放たれるマコトの艶めいた喘ぎ声が、それを確かに証明している。
「ふあっ、あ……お、おしりが、おしり、すごいっ」
「おしりの穴でこんなに感じるなんて……おかしいよ、ヘンタイだよっ!」
 言葉険しく言い募りながら、ユウはバイブをゆっくりと前後させる。マコトの目じりからは大粒の涙が、ぼろぼろとこぼれ出ていく。
「よがってばかりないで、答えてよ……誰かとエッチした事あるの?」
「そんなのないよ、ないようっ」
「ふぅん……それなのに、お尻で感じちゃうんだ。やっぱりヘンタイだよ」
 ユウはどこか満足げに呟いて、マコトの上から身体を離すと、今度は正面から折り重なっていった。兄妹の下腹部は圧し合わされ、勃起したペニスの先端と濡れそぼった花弁とが擦れ合って、それぞれの分泌した粘液にぬるりと滑った。
「セックス……するよ?」
 ユウの言葉に、マコトは少しだけ怯えたような面持ちになった。悦びと困惑に泣き濡れた黒い瞳が、怯えた小動物のようにユウへと向けられる。肛門に異物を突き立てられたままソファへと横たわる肢体は既に緩み切っていて、あられもないその格好を隠す事もままならない様子だった。
「怖いよ、ユウちゃん」
「大丈夫だよ。我慢してれば、すぐ終わるから。それに……」
 ユウは舌を伸ばして、マコトの頬に残った涙の跡を舐め取った。
「それに……きっと、気持ちいいよ」
 そう言うが早いか、ユウはペニスに手を添えて花弁へとあてがい、何の躊躇もなく腰を突き出した。大きく開いた亀頭が肉襞を押し分けて、膣深くへと勢いよく滑り込む。おびただしく溢れ出る愛液が助けとなってか、挿入は意外なほどスムーズだった。脈打つペニスは肉親の膣を苦もなく貫き、その奥底へと達した。
「うあ、あ、ああ……あ」
 肛門にバイブを咥え込んだまま兄妹に犯されるという異常なシチュエーションに、マコトの思考は混迷しつつあるようだ。魂を抜かれたかのように弱々しく喘ぎながら、マコトは未知の快楽に悶えよがった。
「……ほら、やっぱり感じてる。じゃ、こっちは?」
「ひっ、うあっ……あああああっ!」
 新しく覚えた快感に酔っていたマコトの意識を、既知ではあるが鋭く激しい別の快楽が襲う。それは言うまでもなく、肛門を貫くバイブによってもたらされたものだった。
「ま……また、おしりぃ……ひゃうっ!」
「どっちも感じるなんて、いやらしいよ。どっちがいいの、お尻? それとも……」
 バイブを激しく抜き挿ししてマコトをむせび泣かせた後で、ユウはゆっくりと抽送を再開した。緩やかな性交は次第にペースを速めていき、やがて兄妹は粘ついた水音を立てて下腹部を打ち合わせ、互いの肉体を貪り合い始めた。
「お尻と……あ、んぅ……こ、こっちと、どっちがいい? ねえっ」
「わかんないよっ、そんなのわかんないようっ……うあっ!」
 一際強い抽送によって、兄妹の性器がより深く結合する。たまらず悦び交じりの悲鳴を上げたマコトを、ユウはさらなる言葉と腰遣いによって追い詰めていく。
「こっちの方がいいよね? あんなのより、ずっと気持ちいいよね?」
 細い肩を自らかき抱く格好になったマコトは、襲い来る快楽を必死に耐え忍びながら、がくがくと何度も繰り返し頷いた。
「もう、だめ……だめ、いっちゃうよっ、いっちゃうよう!」
 やがて放たれたマコトの泣き声とともに、膣の中で膨れ上がったペニスはびくびくと打ち震えながら、恐ろしく大量の白濁を射ち出した。兄弟は真っ白に焼き尽くされる意識の中で無心に抱き合いながら、高々と声を上げて果てた。



 心地よい脱力感を覚えながら、ユウはマコトから身を離した。まだ半ば硬さを残したままのペニスが膣から抜け出て、どこか間の抜けた水音を立てる。ユウはぐったりとなったマコトの頬に、何度かついばむようなキスを施すと、机の上からマルボロの箱を手に取った。
「ユウちゃん……煙草、だめだよ……」
 寝言のようにか細い声で抗議するマコトの唇に、またそっとキスをすると、
「よかったよ……お兄ちゃん」
 小悪魔めいた微笑を浮かべて、ユウは囁いた。


(ごめんなさいおわります)
<2001.04.10 UP>