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馨君の画策番外編2
パジャマでおじゃま 2 ANNA様
「え〜、なあに?お兄ちゃん。よく聞こえないんだけど。」 10日振りに東京の兄から電話がかかってきた。 雑音が酷い所をみると、公衆電話からかけているらしい。 「パジャマ?この間お母さんが送った荷物の中に、入ってなかった?」 「違うのが要るって、何処に仕舞ってあるのか言ってくれなくちゃ、にゃんには判らないよぅ。」 「別のって…自分で買えば良いじゃない。」 「恥ずかしいって、…あぁ〜、誰かさんにプレゼントするんだ〜。」 「仕方が無いなぁ、にゃんが買って送るから。…うん。楽しみに待っててね。」 「じゃあ、馨さんに宜しく伝えてね。」 私の名前は美夜、皆に「にゃん」って呼ばれている。3人兄弟の末っ子で、上に兄が二人いる。ちょっとひょうきんな慎一お兄ちゃんと、今は東京の大学に行っている慎二お兄ちゃん。 私のことを「にゃん」って呼びだしたのは、慎二お兄ちゃんの方。 最初、お父さんやお母さんが、私の事を「みやちゃん」って呼んでいたんだけど、慎二お兄ちゃんは上手く「みやちゃん」って言えなくて、「にゃぁぁん」になって、そのうち「にゃん」になったんだって。 にゃんこみたいで可愛いので、この呼び名はお気に入りなのだ。 慎一お兄ちゃんとは10歳、慎二お兄ちゃんとは6歳離れてる。 お兄ちゃん達は二人とも優しくて、身内の贔屓目に見てもカッコイイ方だと思う。 今は慎一お兄ちゃんはお嫁さんがいるし、慎二お兄ちゃんにもお付き合いしている人がいるから、たとえ血が繋がっていなくてもお嫁さんになるのは無理なんだけど、幼稚園の頃は、大きくなったら慎二お兄ちゃんのお嫁さんになるんだって、近所の女の子と話していたくらいだもの。 そう、にゃんはブラコンなんです。 お父さんとお母さんには内緒だけど、慎二お兄ちゃんのお相手は馨さんって言って、男の人なの。 最初はビックリしたけど、何回か遊びに来て話していると、すっごく可愛くて年上だなんて思えないくらい。今ではこっそり応援してます。 今日の電話は、その馨さんにあげるらしいプレゼントを買って欲しいって依頼。 寝相が悪いから、テレビで見たモーモーパジャマが欲しいんだって、恥ずかしいから買いに行けないって言う電話でした。 週末にでも買いに行ってあげよう。 週末の商店街は混んでいた。学校の帰りに目をつけていた雑貨屋に入る。 お小遣いは下ろしておいたから、お財布の中はゆとりが有る。それに、後からお兄ちゃんに手数料も貰ってしまおうと言う考え。 可愛い馨さんの為なら、それくらいの出費は覚悟していてね、お兄ちゃん。 パジャマのコーナーには、モーモー柄の他にも、ゴジラや河童やおサル等いろいろなつなぎのパジャマが有って、ついつい目移りしてしまう。 馨さんなら、どれを着ても可愛いだろうなと思いながら、白地に黒のホルスタイン模様のパジャマを買った。 白地にこげ茶色の模様のパジャマも有って、内緒で自分用として買っちゃった。 馨さんと色違い。うふふ。 他にも同じ柄のマグカップや傘、スリッパなんかも有って、見ているだけで楽しくなってしまう。 小物を見ていたら、後輩の満瑠ちゃんに出会った。 彼女は二つ年下なんだけど、妹みたいな子。南波君って言う双子のお兄さんがいて、同じ中学に通っている。 満瑠ちゃんは馨さんの妹で、今年の春に紹介されて、ゴールデンウィークにお兄ちゃんと馨さんの事を知った時には、一緒になってお兄ちゃん達を別れさせようと協力した仲間なの。 お兄ちゃんを取られたみたいで嫉妬していたんだと思う。でも、お兄ちゃん達を見ていたら、本当に好きなんだなって思って、結局は協力しちゃったけどね。 家に帰ってきた時くらいは、私だけのお兄ちゃんでいて欲しいから、夏休みにはまた一緒にお邪魔虫しようねって約束している。 満瑠ちゃんにこっそり、買い物の内容を教えてあげたら、彼女も馨さんとお揃いにするんだと言って、自分のと南波君の分のモーモー柄のパジャマを買っていました。 これで4人お揃いになるから、慎二お兄ちゃんを悔しがらせてやろうね。 次の日に早速パジャマを送って、お兄ちゃんに電話した。 もちろん自分も同じパジャマ着てみたけど、トイレに行く時結構大変で、家でしか着れないなと思った。 お兄ちゃんはまだ帰ってきていなくて、電話に出たのは馨さんだった。 「あのね。多分馨さんのだと思うんだけど、モーモー柄のパジャマ送ったからね。」 『え?』 「こっそり、にゃんのもお揃いにしちゃった。」 『モーモー柄って、牛の柄だよね。』 「うん、私のがこげ茶色で、送ったのが黒いの。」 『先輩、この間そのパジャマ買ってくれたよ。』 「え〜?!じゃあ、にゃんが送ったのって…」 『先輩が着るの?』 「お兄ちゃんが着るのォ?」 馨さんは小柄だから可愛いと思うけど、お兄ちゃんには…おかしい〜。 モーモーパジャマから、にょっきり足が出てつんつるてんな格好のお兄ちゃんを想像して、二人してひとしきり笑った。 わかっていたら、同じ柄の普通のパジャマにしたのに…。 『今度、お揃いのパジャマで泊まりにおいでよ。お揃いなの黙っていて、驚かそう。』 嬉しそうに話す馨さんの声を聞きながら、お兄ちゃん達幸せそうだなって思った。 にゃんにも、早くそういう人が見つからないかな〜と思いながら、電話を切った。 …5人お揃いになっちゃったの、満瑠ちゃんと南波君には内緒だよ。 <1999.05.11 UP>
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