三宮家の日常
〜お猫様との闘いの日々〜
ANNA様

 夕食後、母さんは台所で洗い物をしている。
 純兄ィが食後のフルーツでもと、みかんを取りに行っている。
 樹はポットのお湯を汲み替えに、純兄ィと一緒に台所に行っていた。
 緑はお茶を入れ、等の膝の上には、猫が2匹丸まっていた。
 夕刊を読んでいる等は、猫の睡眠の邪魔にならないようにと、表彰状でも渡すような格好で新聞を読んでいる。
「み〜どりちゃん」
「なぁに?」
「なぁぁん?」
 緑は居間の入り口に立つ兄と妹を見上げた。
 等の膝の上で丸まっていた猫も、彼らを見上げていた。
「ほらね。やっぱり同じに返事するでしょ?」
「本当だ。」
 樹は得意げに純兄ィに報告していた。
「こいつ、等の膝を占領するだけが取り柄かと思ったら、こんな芸当も出来たのか。」
「芸当?どこが?見ろ、こののほほんとした表情を。芸なんか出来やしないよ。」
 等が不服げに答える。新聞のページをめくるのも大変そうである。
「こいつら、俺が拾ってやった恩も忘れて、等を親とでも思っているんじゃないか?解剖される所を救いだしてやったのは俺だぞ。」
 テーブルの上に籠に山盛りのみかんを置きながら、純は等の膝の猫を撫でた。
 2匹とも気持ちよさそうに、ごろごろと咽喉を鳴らしている。
「親?人の膝を座布団か何かだと思ってるんじゃ無いか。」
 等は新聞を脇に置くと、2匹の猫を膝から下ろそうと立ち上がった。
「にゃ?」
「な?」
 『みどり』と呼ばれた長毛の白猫は、素直に膝から降りると、『何で下ろされたんだろう?』と言った表情で下から等を見上げていた。
「いててててっ、こらぁ、みる!痛いって。」
 『みる』と呼ばれたもう一匹の白混じりのきじ猫は、『何でいきなり下ろすのよぉ!』といった表情で、必死に等の足にしがみ付いていた。
「こら、離せ。」
「うなっ!」
「痛ってぇ…」
「うななっ!」
 きじ猫は遊びと勘違いしたのか、がしがしと等の足を齧り出した。
「猫キックは止めろ〜。風呂でしみるんだぞぉ〜」
 きじ猫と等の攻防は続く。
『みどり』はバタバタと動かされる等の足と、そこにしがみ付く『みる』
の姿をちょこんと座りながらも、首だけを上下させて一心不乱に見つめている。
 テーブルの反対側では、同じように首を振って等の足を見つめている緑がいた。
「…あんな所まで、一緒だね…。」
 樹がひそひそと純に耳打ちして、笑っていた。
<1999.09.21 UP>