ボーイフレンド |
【 後 編 】
薄いカーテンごしに淡い光が司書室をみたしていた。 司書の事務机と作業用の会議用机、あとはところ狭しとつめこまれた本棚でいっぱいの部屋だった。 窓際の席に座り、わずかなカーテンの隙間から神君の姿をのぞき見る。 それはいつもやってることだけれど、今、私の手に触れているのは本ではなくて。 (綾香さんの胸って、いがいと大っきいんだね) 夏の薄いブラウス越しに、神君のそんな言葉を想像しながら、柔らかいふくらみを包みこむように撫でてみる。 さわり、と指先が敏感な先端の上を走るたび、かすかに甘い感覚が広がっていく。 神君だったら、ここにどんな風に触るんだろう。あの大きな手に触れられることを考えただけで、甘い痺れが走る。 ゆるく撫でているだけじゃ、あきたらなくなって、強くそれを揉みはじめる。 学校で、しかも神君はあんなに真面目に部活してるのに、それを見ながら私はこんな恥ずかしいことをしている。 我慢できずに、リボンをほどきブラウスの前をあけると、中でブラの肩紐をおとして堅くなってしまった乳首をきつくつまみ上げた 「はぁ…っ」 ため息にもにた声が、思わず漏れる。 (綾香さん、やらしーい) こんなとこ神君がみたら、どう想うだろう。嫌われちゃうかな。 それとも、一緒にえっちな気持ちになって、こんなこと言ってくれるかな…。 指先を動かしながら、潤んでしまった目で、神君の姿を追いかける。 ちょっと大きめな胸のぽよぽよした感触を自分で確かめながら、神君の大きな手を想像する。 あの少し骨っぽい指先がここをつまんで、こねまわして………。 (ここ、堅くなってるじゃん。…気持ちいい?) こうしてほしい、と思うままに自分でそこを嬲っていたら、足の間がむずむずしてきてしまう。 「…ふ…ぅん……」 大きく息をはくたび、じんじんと甘い感覚が一部分を目指しておしよせていく。 (綾香さんって、すごいいやらしんだ。ここ、学校だよ?) 手が止まらない。もっと確かな気持ちよさをもとめて、お尻をパイプ椅子に押しつける。 下着の中のぬるりとした感触。 強く全体を圧迫するように腰を動かしているうち、ふとその自分のその動きの淫猥さに気がついて、赤面してしまった。 (やだ、恥ずかしいよぉ…) そう考えながらも、動きはどんどん大きくなっていく。 にちゃ、という湿った音がショーツ越しに響いてくる。 きつくしこった両方の乳首を指先でころがしながら、もっともっといやらしいことを考えてしまう。 (神君にここ、さわって欲しい……) どこを? なんて聞かれても、恥ずかしくてきっと答えられない。 でも、指はゆっくりとスカートをまくり上げ、その下の熱くなっている部分に向かっている。 (どこ?) 太ももを指先でなぞりながら、神君の言葉を想像する。すこし腰を前に滑らせるように座り直して、そっと、ショーツの上をなぞってみた。 「…んっ……」 (ここ? 綾香さん) 薄い布の下で、そこがひくり、と震えている。 (じんくぅん……ねえ、そこ、……もっと……) くちゅ、と湿った音が部屋に響いていた。 布越しにしこった部分をほぐすように撫でると、蕩けそうな熱がそこからはい上がってくる。 (もっと、どうしてほしい?) 私の想像の中の神君は、ホンモノよりちょっといじわるだ。 焦らすように、わざと私から恥ずかしい言葉を引き出そうとする。 毎朝一緒に電車に乗ってくれている神君はすごく面倒見がよくて優しいのに、こんなことを考えてしまう私は、ちょっとおかしいのかも……。 浅いため息をついて、横目で神君をさがす。遠くからでも神君はすぐにわかる。 背の高い、すこし猫背な立ち姿。 (いってくれないとわかんないよ。綾香さん、教えて) 指先を強引に下着の隙間からしのびこませる。 (……ねぇ、こうしてほしいの?) 「はぁ…っ」 ぬるり、と指先で蜜でぬかるんだ部分をなぞった。 とろとろに溶けだしてしまったそこが、指先を熱くからめとる。 (ここはこんなに、正直なのにね? 綾香さんはえっちなんだから、もう) そのぬめりにからめとられるように、指は蕩けた花を幾度もなぞった。 もう、手を止めることができない。 ぷっくりふくらんだ芽を円を書くように撫でると、たちまち痺れるような気持ちよさが体の奥から背筋をはいあがってきて、声を出さないようにするのが精一杯だった。 (やだ…っ! じんくん…、おかしくなっちゃうよぉ) 指の動きにあわせて、いやらしく腰がゆれている。もっと気持ちよくなりたい。 もっと感じたい。私の欲望のままに、指先は慣れた動きで敏感な部分を刺激し続けている。 (じゃあ、やめようか? こんなこと) 際どいところまで追い上げられたところで、指の動きをゆるめる。昂ぶった部分をなだめるようにやさしく揉むと、じれったさに花が収縮し蜜がこぼれた。 (いや…やめちゃ、やだぁ…) すっかり息があがってしまって、目の前でブラを押し下げた胸がゆらゆらと上下している。先端が堅く尖って、感じやすくなってるのがわかる。神君がそれを口に含むことを考えただけで、ぞくぞくしてしまう。濡れた舌が乳首をころがし、きつく吸い上げられる。 軽く噛んで欲しい、っていったら、変態だと思われるかな。 でも、神君が触ってくれるなら、何を言われてもかまわないよ。 (いやらしい綾香さん、大好きだよ。もっとえっちな姿みせて…) 両方の手を下着の中にすべり込ませて、片方で尖った芽を、もう片方は蜜をこぼしている泉をぬるぬるとなぞる。 (神くん…っ!) ぬめりと誘う動きに導かれて、指先が熱く焼けた私の中に少しずつ飲み込まれていった。 「ふ……っ…」 蕩けた花は気持ちよく指を締め上げる。しびれるような感覚が指が花を擦るたびに生まれて、私をうめかせた。一番奥の、女の母性の部分まで強引に指を押し込んでから、私は浅い息をひとつ吐くと、そのままその指で自分の花を嬲り始めた。 声にならないあえぎと、にちゃ、くちゅ、と湿った音が、部屋に響いていた。 (あっ…じんくん…じんくん…っ!) 淫猥に脳髄を犯す快楽にまかせて、指は幾度も敏感な内壁を擦りあげた。 一緒に芽を転がすと、疼く欲望とそれが癒される気持ちよさに、背中がそりあがってしまう。 (綾香さん…中、すごいきつい) まだ、誰も受け入れたことのない部分がきゅきゅっ、と甘く呻いて、指をきたるべきそれと間違えて吸い上げる。 (じんくん…っ…いい、いいよぉ…っ! いっちゃう…いっちゃうっ…!) じれったい痺れに急かされるように一層荒々しく指を動かしながら、きつく閉じた目の裏に、いまの自分の姿を思い浮かべた。誰もいない部屋で乳房をむきだしにして、スカートをまくり上げ、広げた足の間に手をつっこんでいるみだらな姿を。 気持ちよくて、おかしくなりそうだった。 必死に声をこらえながら、薄目をあけてカーテンの隙間に目をやる。 と、こっちを見上げている神君と目線があった、ような気がした。 こんな恥ずかしいカッコを、神君に見られてる…! (いや、神君、見ちゃだめ…っ!) 瞬間、やけつくような快感が背筋をかけのぼり、私はイってしまったのだった。 帰り道、すっかりだるくなってしまった体をひきずりながら、ホームで電車を待った。 そろそろ部活も終わる時間らしく、大きなスポーツバックを抱えた制服姿も何人かいた。 私は、というと、さっきからずっと学校であんなことをしてしまった罪悪感と、 それをはるかにうわまわってしまった気持ちよさを思いだして、何度もため息をついていた。 「綾香さん?」 突然に、耳元近くで低い声が響いた。 「えっ?」 おどろいて振り向くと神君が優しい笑顔で立っていた。 「あ、やっぱりそうだ。今、かえり?」 「…うん、司書室で先生の手伝いしてたら、遅くなっちゃったの」 顔がひきつってないことを祈りながら、笑顔を作ってみせる。 「司書室って、2階の端だったっけ?」 神くんの言葉にどきん、と心臓が跳ねた。 「そうよ。……どうして?」 「じゃあ、やっぱりあれ、綾香さんだったんだ」 「え?」 「カーテンの隙間から覗いていた子と目があったような気がして、……なんとなく綾香さんかな、って思ってたから」 神くんは私の肩を抱くように身をかがめて、耳元にささやいた。 「俺のこと、みててくれた?」 息がかかると、さっきの甘い感覚がよみがえってくるのと、顔が間近にある気恥ずかしさとで、私は耐えきれずに目をふせた。今、目があったら、自分のいやらしい欲望に気づかれてしまいそう。 「…うん、こっそり」 「ほんとに? うれしいなぁ」 笑いをふくんだ声に、後ろめたくて顔が上げられない。 頑張ってる神君をしり目に、イヤラシイことをしてた…なんて。 ホームにすべりこんできた電車に乗ると、車内はそこそこ混んでいた。 二人でドアによりかかって、言葉すくなに窓の外を見ていた。 でも、それは決して気まずい沈黙ではなかった。 言葉にしなくても伝わってくる神君のあたたかい気配が、私のうしろめたい気持ちもぎこちなさもみんな溶かしてくれる。 私が神君を盗み見するたびに、神君はなに?と目線でたずねる。なんでもない、と首を降る私に、神君は笑いながらひとことふたこと他愛のないことを囁く。 明日も、あさっても、こうして一緒にいられたらいい。 ふいに、現れたそんな気持ちが、私の心にじわりとしみてくる。 神君は親友の弟で、二つも年下だけれど、それでも神君といられることが、こんなにも嬉しい。 さつきへの言い訳はまた、ゆっくりと考えることにして。 「ねえ、神君……」 私は駅のホームにおりて、神君をふりかえった。 <1999.9.8.UP>
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