[ 七海ちゃん公式FC分室 ]
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馨君の画策
<後編> ANNA様
先輩は部屋に入ってすぐに、電灯のスイッチを入れようと手を伸ばした。 「恥ずかしいから、電気は点けないで。」 「わかった、で、僕はどうしたら良いんだろうね。」 「ベッドに座ってて。」 椅子の上に鞄と上着を置いて、先輩がベッドに腰をかけた。スプリングのきしむ音が響く。 「脱いだ方が良い?」 「僕に脱がせて。」 焦る指先は、なかなかシャツのボタンが外せない。それでもどうにか下着一枚にする事が出来た。 立ち上がり、小さな子供のようにその場に服を脱ぎ捨てる。 真っ暗だと思った部屋は、目が慣れるにつれて、朝出かける時に開けたままのカーテン越しにさし込む、外の灯りにはっきり見えてくる。 先輩の前にしゃがみ、下着の中から窮屈そうにしているそれを、壊れ易い宝物か何かのようにそっと掬い出す。 見上げた先輩の顔は良くわからなかったけれど、きっといつものように微笑んでくれたに違いない。 一瞬戸惑ったが、覚悟を決めて一気に頬張ろうとした時、 「ちょっと待って、馨。」 …止められた。 膝の上に座るように言われ、向かい合うようにちょこんと座った。 「なにが有ったの?」 先輩に問われたら隠し事など出来ないから、素直に嫌だった今日の出来事を話し、いろいろ考えて見たけれど、自分からも積極的になろうと思った事を話した。 先輩は自分もそう言った会話は嫌いだと、馨の始めてが自分で良かったと思っている事、好きだと面と向かって言うのは恥ずかしいんだ…と。 でもそんな馨だからこそ、一緒に暮らしたいと思うようにになったのだ…と、言ってくれた。 「じゃ、今夜は馨の決意に答えなくてはね。」 「うん、今日は僕に任せて…。僕が先輩を気持ち良くさせてあげる…。」 床に座って先輩の持ち物に口付ける。 大好きな先輩の持ち物でなければ、触れたいとは思わないグロテスクな、時として滑稽でさえあるもの…。 でも、先輩の一部であるからこそいとおしい物。今度は迷うことなく口に含んだ。 乾燥した茎の部分、つるんとした先端の部分、僕より濃い目の下草、その下にある柔らかな皮袋…全身の感覚が口に集まったかのように、顎がだるくなろうと、窮屈な姿勢が苦痛であろうと、一心不乱に舐った。 徐々に硬度を増し、その形態を変化させて行く愛しいモノ。 僕も先輩も息が荒くなっている。 時々先輩の喘ぐ声が聞こえる。 以前に先輩にしてもらった時の事を思い出し、僕のモノもまた、変化を起こしている。 ベッドサイドの物入れの中から、ゼリーのチューブを取り出す。 「先輩、力抜いていて下さいね。」 最奥のこれから僕を受け入れてくれる場所に、ゼリーを塗りこめる。 指を入れていくにつれて、先輩の身体に力が入っているのが分かる。 「先輩…大丈夫?」 恐る恐る訊ねると、何も言わないままで僕の頭を軽く叩いて、合図をしてくれた。1本だった指が、2本になり3本になり…、僕の下半身では小さな恐竜が自分のものではないように猛り狂い…。 2年前のあの日の事を思い出し、慎重に、慎重に、…今回は先輩を苦しめたりしないようにと願いながら…。先輩の内へと身体を進めていった。 「先輩、大丈夫?」 「痛くない?」 「ねぇ、気持ち良い?」 ぎこちなく腰を動かしながらも、一生懸命に僕を気遣うその言動に、思わず苦笑が盛れる。その様子を見て何を勘違いしたのか、 「先輩、苦しいなら止めようか?」などと聞いて来る。 ここまで来て止めたら、馨の方こそ苦しいだろうに…。 確かに、痛みを伴ってはいるものの、我慢できないほど酷くは無かったし、何よりも馨の想いを受けとめてやりたかった。 何かをこらえるようなうめき声と共に、馨は達したようだった。見上げれば軽く眉間を寄せ、官能の色を浮かべたその表情は何物にも変えがたい表情だった。 僕の内部から抜け出し、一瞬の間と深い嘆息の後、おずおずと覗きこむ様にして尋ねてくる。 「先輩、先輩。痛い?大丈夫?気持ち良くなかった?」 立て続けに、まるで質問の嵐だ。 「大丈夫。慣れない事をしたから、痛みは有るけど気持ち良かったよ。」 馨は僕の真上でほっとしたような表情を見せると、そのまま僕の胸に重なり合って来る。 胸の上で荒い呼吸も重なっている。 「馨は?…どう?気持ち良かった?」 「うん、すッごく。」 「そりゃ、良かった。」 恥かみながらも嬉しそうな笑顔。 「でもね。僕はまだ満足しきっていないんだ。」 馨の手を取ると、そっと自分の股間へ導く。 「先輩…逝ってない?」 馨は僕の股間を確かめながら呟いた。 「どうしよう。僕だけ気持ち良くなっちゃったんだ…。」 う…、このままだと…泣き出すかも…。 泣かれてしまったら、せっかく馨から積極的に求めてきたこの時間が台無しになってしまう…。 「先輩が気持ち良くなるのには、どうしたら良いんだろう。」 「僕は十分気持ち良くさせてもらっているよ。ただ…。」 「ただ…?何?」 「最後は馨の中で気持ち良くなりたい。」 そっと馨の後孔を弄ってやる。 外からの街燈の灯りの中でも、赤面しているのがわかる。 「馨の中に入って、馨のイク顔が見たい。だめ?」 終いにはちょっと拗ねた様に…言いながらも馨の蕾を弄ぶ。 「ダメじゃない。」 「僕も先輩が感じたい。」 良い子だね。でも、せっかく馨から「僕も先輩を気持ち良くしてあげたい。」って言ってくれたのだから、もう少しおねだりしてみても良いかな。 何だか、僕の方が気持ち良くなってしまった感じがするけれど、先輩も喜んでくれたようで良かったと思った。 先輩が僕に入れたいって言った時は、自己嫌悪に駆られたけれど、僕の中で気持ち良くなりたいって言ってくれて、先輩が僕を欲しがっているのを実感して(男は身体の方が嘘をつけないから…)もう、どうなっても良いと思うくらい嬉しかった。 先輩の指がいつものように僕のお尻を悪戯し始めて…と、 「馨が自分で入れる所が見て見たい。」 突然、先輩はそんな事を言い出した。 「ど、どうやって?」 「そのまま、上に乗ってごらん。」 「僕はまだ腰に来ていて動けないから、馨が自分で入れて見せて。」 「僕を気持ち良くしてくれるんだろう?」 …それって、いわゆる騎乗位って体位では? は、恥ずかしいよ〜。丸見えじゃない。 灯りは点いてないけれど、外からの光が部屋中をぼんやりと浮かび上がらせている。 「やっぱり、嫌かなぁ…。」 先輩の残念そうな口調に、何でこんな格好でここに居るのか思い出した。先輩を気持ち良くさせて上げたいから、僕の方から誘ったんだ。 「ううん、頑張ってやって見る。でも、上手く出来なかったら…。」 「大丈夫。僕も手伝うよ。」 意を決し、こっくり頷くとおもむろに先輩の上に跨った。 お尻に先輩のが当たってる。両手で身体を支えるようにして、ゆっくりと腰を下ろしていった。 あれ?滑って入らない…。ちゃんと目標は定めたつもりなのに、いざ腰を沈めようとするとつるんと逸れてしまう。 先輩の苦笑い。僕、上手く出来なくてごめんなさい。 「僕が馨を支えているから、手でちゃんと誘導してごらん。」 先輩の腕が僕の脇に廻され、上体を支えてくれた。 今度こそ…、自分の目では見えないから(見れないよ。恥ずかしくて)感触だけを頼りに、ゆっくりと先輩のモノの上に腰を下ろしていく。 僕の蕾んだ部分に先輩のが当たってる。少しずつ進入を果たし、ため息をひとつ。 「ちゃんと入ってる?先輩。」 「ああ、馨の中、気持ち良い。馨は辛くない?」 「うん、大丈夫。先輩のが…中でぴくぴくしてる。」 突然支えていた手が放たれた。いつもは感じないほどの衝撃。 「ひゃぅ、…ぁ、ぁ、深いとこ…当たるぅ…。」 逃れようとすると、腰を押さえつけられ更に深いところへ導かれた。 「馨が動いてごらん。」 動くって言われても…いったい…どうすれば良いのか…。 固まったままの僕は、先輩の言うがままに身体を動かし、突き上げられ、翻弄されて訳がわからなくなって行き…。熱い飛沫を中で感じて…。 「…うぷっ。」 先輩の声にはっとして我に返ると、僕の放った物が先輩の胸から顔にかけて飛び散っていた。 「うわわわ〜。ごめんなさい。…ぁぅ…。」 焦って慌てているのだけれど、先輩との繋がりを断つ時思わず声が出てしまう。 「いや、大丈夫だよ。…まさか顔射のおまけつきとは思わなかったけど…。」 「いま、拭きますから。」 慌てて枕もとのティッシュに手を伸ばそうとしたら、先輩に止められた。 「馨に舐め取って欲しいな。」 先輩が僕の唇を指差しながら言った。 苦味のあるそれを、胸のほうから舐め取って行く、夜だからか少し延びてきたひげが、舌の先にざらっとした感触。 どちらとも無く唇を求めて、抱きしめられて、何時の間にかうっとりと身体を預けてしまっている僕がいた。 「…馨…?」 「…ん…」 馨は僕の胸の上に身体を預けたまま、眠そうな声で答えた。 「眠い?」 「ん…」 既に半分以上眠っているようだ。 馨を僕の上から横に移動させ、シャワーは朝で良いかと簡単に身体を清めてから、再び腕の中に抱きしめた。 馨はされるがままになっている。完全に寝てしまったらしい。 「馨?」 返事は無く、規則正しい寝息が聞こえている。 薄明かりの中、馨の寝顔を見つめ、先程の馨の言葉を噛み締める。 僕の方こそ、馨がこれから誰か可愛い女の子と家庭を築き、子供に囲まれて暮らす生活を奪ってしまったんじゃないかと、思う事があるよ。 妹や弟を可愛がる君を見ていると、罪悪感に駆られる事さえある。 それでも馨にはいつもの笑顔で、僕を好きだといって欲しい。 僕らの関係は、世間一般から見れば間違った関係なのかもしれない。これからも馨が嫌な思いをする事が起こるかもしれない。 馨を悲しませたくは無いけれど、馨のいない生活など考えられ無くなっている。 僕の後を一生懸命ついてきた馨、全身で僕が好きだといってくれる馨、卒業式のあの日の嬉しそうな馨、一緒に暮らすためにと頑張っていた馨…。 気恥ずかしくて面と向かっては言えないけれど、僕はそういう、一途な馨だから好きになったんだよ。 「馨、大好きだよ。」 そっと馨に囁くと、 『僕もです。先輩。』 寝ているはずの馨が微笑んだような気がした。 <1999.04.28 UP>
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