■ ふぇろ〜しっぷ in the Room
沢村様
Scene - 05

「――で……?」
 呆然として床に座り込んでしまった瑞穂に顔をしかめながら、山崎は一番会話が可能そうな武藤を見た。瑞穂と同じく床に座り込んでただバスタオルを胸元に当てているだけの状態で呆然としている綾香に、その身体を山崎の視線から庇いながら手早く武藤がバスタオルを巻きつける。
「安心してください。彼女には手出ししていません」
 身繕いを整えて一安心をしたのか、綾香の横で床の上にあぐらをかいた武藤が、シャツの学年章で山崎が年上と判ったのか頬をかいて天井を見てから予想外に真面目な声で言う。人物の配置図から察して想像した最悪の事態とは異なると推測した山崎は、短く息をついてYシャツのボタンに手をかけた。
「……。いや、だからと言っていきなりそれは」
「誰が混ざるのするのと言うか、俺は和姦派だ。――瑞穂、ほら」
 階下で響く足音に声を抑えながら、自分の発言にか耳まで赤く染めて恥ずかしげに身を縮こまらせている瑞穂の肩に脱いだシャツをかけ、山崎は部屋全体を見渡せる様に壁に背中を預ける。
「――で、服は?」
「女子シャワールームに」
「……。流石に取ってこれないな…。仕方ない。まずは俺のトレーニングウェアをロッカーから取ってくるしかないな」
「よろしくお願いします」
 長身で引き締まった体躯と上下関係が身に染みていそうなその物言いから体育系部員らしい武藤を見た山崎は、続いて動かした視線で綾香と目があい、逸らす。――何があったのか瑞穂が無関係なのはいいものの、この男女の間柄はどう見ても明らかだった。他者の情交の最中に割り込んだ様な気まずさと生々しい雰囲気の綾香の肢体に、急に居心地の悪さが増した気がして山崎は大きく息をつく。
「まぁ…何とか誤魔化して取ってくるからその間瑞穂を頼む」
「はい」
 生真面目なもののどこか憎めない気さくさもある武藤の返事に肩を竦めながら、山崎は階段収納のスイッチを逆にいれる。が、モーター音とわずかなは開閉の後ハッチはその動きが凍りついた。
「何?」
「どうしました?」
 十数センチだけ開いたまま止まったハッチの隙間を覗き込んだ山崎の目に、いつの間に移動したのか階段が降りるべきスペースを塞ぐ形で置かれている巨大な壇上用パネルが映る。下手に圧しつつければパネルと階段の両方を壊しかねない状態に慌てて切り替えたスイッチに、山崎と武藤の目の前でどこか不調そうな音をたてながらハッチが再び閉まった。
「どうしたの……?」
「……。出られない」
 後ろから少しだけ覗き込もうとしていた二人の少女に、山崎は短く答えた。