■ ふぇろ〜しっぷ in the Room
沢村様
Scene - 07

「ぁん……神くん…今はだめぇ……ああん…おねがい…いまはゆるしてぇ……」
「綾香さん、声を抑えなきゃ駄目だよ」
 極力声を抑えているのではあろうが、狭い室内ではその声は聞こえるには十分な声量だった…ましてやもう一方の男女は沈黙してその睦み事に半ば耳をそばだてる形になってしまっているのである。
 幼なじみの異性の膝の上にうやむやのうちに腰を降ろしてしまった瑞穂は、全身が熱を帯びている身体を意識しながらそっと耳に手を当てて塞ごうとした。その手を山崎の手が搦め取る。
「そんな事をすると向こうが意識するだろう?」
「でも……」
 天気か時間を答える様なあっさりとした口調に、瑞穂は眉をひそめて山崎を見た。クロスワードを解いている時に似た楽しげな笑みを浮かべている幼なじみに戸惑う瑞穂は、軽く背を伸ばして顔を寄せた山崎に思わずキツく瞳を閉じる。
 耳たぶに軽く触れた唇の感触に、瑞穂の身体が膝の上で強ばった。
「それとも、お前が変に意識するのかな」
 甘く囁かれた声に、山崎の膝の上で瑞穂の身体に何度か震えがはしる。
「ゃ……兄さん……」
「予習でもするつもりで、しっかり見ておこうか」
「いや…、兄さん……そんな……聞いちゃ…だ…だめ……」
 脈のたびに全身が揺さぶられている様な感覚にちいさく首を振る瑞穂の頭を、撫でる形で山崎の手がもう一組の男女の方へと固定する。
「聞くだけじゃないな。――見て勉強しないと駄目だろう?」
「だめ……そんなの……人の……」
 山崎の言葉に首を振ろうとした瑞穂の瞳に、その手が見せようとしていた光景が飛び込んだ。
「――ぁ……」
 無骨なスチール製の机でわずかに視界を遮られているものの、垣間見える数歩と離れていない場所で男女が絡み合っている姿は見間違えようのないものである。
 くすんだ色の制服のスラックスの上に乗った綾香のピンク色に上気した身体が、陰になっているその下腹部に吸い込まれている少年の腕が小刻みに揺れるたびにびくびくと痙攣していた。壁に背を預けて足を伸ばしている武藤の上で同じ様に武藤に背中を預けている綾香だったが、その脚は武藤の足の両脇へと落ちている。
「神くぅ…ん……、ぬれちゃう…せいふく……ぬれちゃう……ぁあ…だめ……くぅん……」
「大丈夫。バスタオルが当たってるよ」
 随分と背中が露出しているのは、スラックスとヒップの間にバスタオルを挟ませている為らしい…綾香の危惧の理由を強調するかの様に粘液質な水音がにちゅにちゅとあからさまに部屋に篭る。いつはだけてしまうか判らない程に綾香を包むバスタオルは緩み、豊かなバストが小刻みに弾むたびに少しずつ上気した肌が露出していく。
 綾香のバスタオルがいつ落ちるかという心配に、それを直したいという不安に駆られながら瑞穂はいつの間にか二人の痴態を見つめてしまっていた。