■ ふぇろ〜しっぷ in the Room
沢村様
Scene - 10

「……。そうだ」
 何かを思いついたらしい山崎の声に、瑞穂はわずかに眉を寄せながらその顔を見た。
「兄さん…、何を……?」
「いい事思いついた」
 にやりと癖のある笑みを浮かべた山崎に肩と腰に手を添えられて押し上げられた瑞穂は、床に落ちたバスタオルに慌ててYシャツの裾を両手で下へと抑えつける。男物とはいえ紳士物のLでは太腿の付け根を隠しきるには少し頼りない長さであり、胸に突き上げられている為に浮いている前身頃を押し下げた手に、布の下で胸が圧しつぶされてヒップの下のラインが露出した。
「ゃ……」
 少し前屈みになった瑞穂の後ろでひょいと山崎が立ち上がり、瑞穂の手を引く。
 愛撫を止めないものの自分達を興味深げに見上げている武藤の視線に頬を染める瑞穂は、数歩歩いてまた床に腰を降ろした山崎に戸惑いの表情が浮かべた。先刻は武藤達と90度の角度を保っていたのだが、山崎の選んだ場所は階段の収納ハッチの鉄パイプを背にした、彼らの正面の位置である。
「兄さん……」
「おいで」
 床の上に伸ばした山崎のつま先は武藤のものに当たりそうに近かった。――先刻と同じ様に床の上に座った山崎の意図が自分の勘違いである事を願う…しかし瑞穂の期待を裏切る様に青年の手が軽く身体を引き寄せる。
「駄目…兄さん……近過ぎちゃう……」
「狙いはそれだけじゃないんだ」
「え……?」
 膝の裏を山崎の手に突かれ、バランスを崩して青年の腿の上に膝を落としてしまいそうになった瑞穂は思わずその向こう側に手をついて膝を落とす事を避けた。膝を上げた四つん這いの姿勢に自然と腰の位置が上がり、Yシャツの裾がウエストまで捲れあがる。3つの視線が露出してしまった下半身に注がれるのを感じて瑞穂の瞳がキツく閉ざされた。
「やだ…嫌……兄さん……」
 膝を降ろせない不安定な体勢に片手でYシャツを直す事が出来ずに身を震わせる少女を青年が再度引き寄せ、転がる様に瑞穂の身体は山崎の腿の上に落ちる。
「ごめん。まだ腕を酷使させるのはまずいよな」
「大丈夫……。――ひ……っ!い…や、兄さ……ん!」
 裾を直す瑞穂の身体を腿の上でくるりと回転させた山崎の胸板が少女の背中を受けとめる。収納された階段を背景に、武藤と綾香の目の前に身体を晒す状態になった瑞穂は山崎の膝の上で膝をあわせて身体を縮こまらせた。
 ――自分達を観察しながら濃厚な愛撫を続けている恋人同士の前で同じ様に向き合う行為に続くであろう予想に、瑞穂の唇から震えた吐息が漏れる。