■ ふぇろ〜しっぷ in the Room
沢村様
Scene - 16

 自分へと注がれていた視線がどこか変質してしまった感覚に、山崎の膝の上で瑞穂はわずかに身を縮こまらせる。
「つ…つだ……さん……」
 切なげに少し開いた唇と寄せられた眉、ふわりとした柔らかそうな頬は桜色に染まり、濡れた瞳に宿った熱に浮かされた様な光…図書館で見た柔らかな笑みを今の綾香に見いだす事が瑞穂には出来なかった。
「意地悪したいワケじゃないの…。でも……」
「津田さ……ん……」
 壊れたレコードの様に綾香の名を呼ぶしか出来ずにいるものの、瑞穂には自分の唇が正常に動いている感覚がしなかった。――自分の知っている人間の違う面を性で感じ取ったのは2度目だった…最初にそれを感じたい相手は、今瑞穂の背後にいる。幼なじみであり、兄の様であり…そして異性である山崎が何をしたいのかが瑞穂には判らない。見ず知らずの下級生の前で自分を辱める事が楽しいのか、ただからかいの度合いが自分にとって過ぎると感じるだけなのか…。さして動じる様子のない3人に瑞穂の中で常識感覚が揺らいでいた。
「津田嬢。――意地悪だけじゃ濡れないだろう?」
「ゃ…っ!」
 持論を補うかの様に山崎の指が背後から瑞穂の下腹部へと延び、唐突に酷くぬかるんだ入口に添えられる。くちゅりとささやかな潤滑液の音が一度だけ、しかしはっきりと静かな小部屋の隅まで届き少女は全身を縮こまらせた。
「いや……兄さん…ゆるして……おねがい……っ…い……ぃ…やぁ……」
「聞こえた?」
「……。す…すこし……だけ……」
「もっとはっきり聞かないと判らない?綾香さん」
 恥ずかしさと恥ずべき感覚に全身が熱をもっている瑞穂の哀願をそのままに、悪戯っぽい口調で問う山崎に綾香がうわずった小声で応える。
 顔が似ているだけの別人の群の中に放り込まれた様な感覚に不安を憶えて瑞穂はちいさな声で山崎を呼ぶものの、幼なじみの優しい配慮の言葉は帰ってこなかった。身体が今にも崩れ落ちてしまいそうな緊張で小刻みに震える少女の身体に、その下腹部でわずかに挿入されかけている指先を意志に関わらず熱い粘膜がひくひくと擦りあげる。
「兄さん……兄……さ…ん……」
「瑞穂。怖がらなくていいんだ」
「にぃ……、――いや………ぁ!」優しげな言葉に緊張を解きかけた次の瞬間、山崎の指が入口でゆっくりと動き出して室内にはっきりと淫らな水音が籠もった。「ひ……ぁ……いやあ…こんな……みられ…て……ぃやあ…ぁ……あぁ…やぁ……いや……ぁ……」
 最初は柔らかな粘膜に触れるか触れないかの弱い感触でゆっくりと入口の縁をなぞっていた指が、徐々にその円を描く速度をあげていく。絡みついた粘液ですっかり潤みきっていた丘はその谷間の底を指が動くたびにやわやわと揺れて粘液の音が舌鼓の様にひっきりなしに漏らす…間違えようもない淫らな水音が途絶える事なく部屋に篭もり、心なしか部屋の温度が上昇した感覚がする…だがそれは錯覚ではなく、火照りきった二人の少女の体温と汗で室内はわずかに蒸れはじめていた。
 指一本で軽く入口を貫かれただけで瑞穂の肢体は山崎の膝を跨いだままはっきりと跳ね上がり、Yシャツの裾を抑えていた手は堪えきれない感覚に妖しく布をよじる。少女の理性の制御から離れてしまった手が皺を寄らせる程に濡れた布を握りしめながら切なげに揺れ、ぴんと尖りきった胸の先端がYシャツに擦られるもどかしさに全身が無意識にいやらしくくねり続けていた。
「室生……さん……」
「ぃや……ぁ…みちゃ……いや……っ…ぁ…んっ…いやぁ……あ…あぁ…っ…いや…いや…いやあ……みないで……ん…くぅ……っ」
 それでもどこかで裾を持ち続けようとしている意識が残っているのか、宙を掻く腕の先で男物のシャツが揺れる。――跳ね上がったまま刺激に反応して降ろせずにいる手に、正面の恋人達の前に滑らかな腹部の近くまでを晒したまま。
 汗にすっかり濡れた白磁をおもわせる肌と思ったよりも濃い柔毛のコントラストと、わずかに離れている為にその動きが見えてしまう粘液にまみれてぬらぬらと濡れている山崎の手に、綾香が口内に溜まりかけていた唾液を無意識に飲み込んだ。