■ レインタクト 第20幕<4>
水瀬 拓未様


 髪を切った里奈はとても鮮烈で、そんな彼女の隣に結花が並び立つと、その姿はとても絵になる。
 素直に、綺麗だと思った。
 自分ではこうはいかないだろうなと思うけれど、同時に、そうなる必要はないんだと分かっているから、焦ることはない。
 私は、私だから。
 里奈の胸で泣いてしまった次の日から、唯は少しずつ、結花に対して自分の気持ちを素直に吐露するようになった。
 会いたい。
 抱きしめて欲しい。
 キスをしたい。
 今まではほとんど言ったことがない台詞を、勇気を出して言ってみたら、結花は微笑みながら、それを全て叶えてくれた。
「わがままを言ってごめんなさい」
 なんだか落ち着かなくて、思わずそう言って謝った唯に、結花はいつもと同じ調子で微笑んだ。
「唯がわがままを言ったことなんでないでしょう?」
 その声は柔らかくて、きっとそれこそが結花の本質で、そんな彼女の素顔を見られる自分がすごく幸せだった。
 囁かれる言葉のひとつひとつで、胸が弾む。
「好きです」
 久しぶりに言うと、結花は目を細めて笑った。
「私も」
 唇にキスをしたあとで囁く結花の言葉は、とても熱くて、耳が溶けてしまいそうになる。

 恋を、している。

 あれ以来、里奈とも話す機会が増えた。
「泣かされてない?」
 廊下ですれ違う時、冗談とも本気ともつかない口調でそんなことを聞いてくる里奈に、たまに、と笑って答える。
 里奈との関係のほうがなんだか姉妹のそれっぽくて、そんなことを考えられるようになった自分に、自然と笑みが漏れた。
 いまは結花に対する想いとは別に、里奈への好意もある。
 一時はあれほど嫌悪していたことを思えば、いま、こんなにも里奈を慕えることが自分でも信じられなかった。
 冷静に考えれば、自分と里奈は恋敵、といえなくもない。
 けれど唯は、結花も里奈も好きだから――――そんな二人と過ごす時間を、何よりも大切にしたかった。