一体今日何度目のキスなのか。
　何度してもぬめぬめと絡み合う舌は熱くて柔らかくて気持ちよくて、俺を恥知らずな情欲でいっぱいにした。焦る様に逃げ回る舌を捕まえては吸い上げる。なめらかな裏側を舌先でくすぐる。密着した体が、たまらない、とでもいうようにぶるっと身震いした。
　不意に、何もつけていない肌と肌が滑りあうなめらかな感触を強く意識する。キスの間中、俺の体に体重をあずけっぱなしの絵里姉ちゃんがしきりにじれったそうに体をすり寄せていることに気づいたからだ。
　キスをしたまま目を閉じているのに、生々しいその体の柔らかさだとか、押しつけられている胸のボリュームだとか、俺の足をはさみこむようにしているむっちりとした太ももだとか、あらゆるものがいっぺんに頭の中をかけめぐっていく。
　一体なにがどうなっているのか、唇が離れて尋ねようとした絶妙のタイミングで
「カズちゃん、どうしよう………」
　絵里姉ちゃんに先手を打たれてしまった。
　問いかけのようでいて意図の掴みきれない質問。その真意がなんなのか、つい考えてこんでいる間に、小さな手が下腹部に降りてがちがちになった部分を掴んだ。
　あっ、と思った瞬間、びりびりと快感が駆け上がってくる。間断いれずに中途半端な刺激で疼いていたそこが、ようやく直に与えられた刺激に喜びいさんでいるのがわかる。
　やばい、なんかこれって、さっきのパターンじゃないか？
「どうしようっ、て、う……なに……っ」
「だってぇ………あぁ……カズちゃんの、ここ、すごく熱くて硬いよぉ……」
　絵里姉ちゃんの答えも何がなんだかわからない。にゅる、と根元からしぼりあげる指が異常になめらかに動いて、やけに気持ちイイところをみると、俺のそこも吐き出した先走りであっというまにびしょ濡れになってしまっているようだ。
　どうしようって、そうだ、そんなこと聞きたいのはこっちのほうなのに。
　せめてみっともない声を噛み砕こうと、歯を食いしばって頭をふる。と、俺の顔をじっと見ていたらしい絵里姉ちゃんの視線とぶつかった。
「カズちゃん……」
　切なそうに眉をよせた色っぽい顔で、絵里姉ちゃんは俺の顔中にキスの雨を降らせはじめた。ひらひらと柔らかく湿った感触が顔中を飛び回っていく。やけにくすぐったくて、甘くて、でも掴まれた部分からこみ上げてくる快楽が意識の表面を容赦なく引っ掻いていく。
「どうしよう……わたし……」
　その間もゆるゆると絶え間なく体が押しつけられる。目線を落とすと、ボリュームのある乳房とぷっくりと堅くなったピンク色の乳首が俺の胸板で押しつぶされる様子の一部始終が見てとれた。一度だけではない、何度も何度も繰り返される仕草に、頭の奥が熱くなる。
　いくら俺が経験値ゼロだからって、その意味がわからないほど無神経じゃない。
　さっき、絵里姉ちゃんはなんて言っていた？
　俺が、欲しい、と。
　全部欲しいのだと。
　俺のモノが欲しくてたまらないのだと、その全身で訴えていた。
　同時に、絵里姉ちゃんがうわごとのように繰り返す、どうしよう、の意味もわかってしまった。
　この先は、もう冗談や悪ふざけでは済まされない。どんな言い訳も通用しない。俺たちが一つになる。俺が、絵里姉ちゃんがお互いの体を求めあうことで犯してしまう禁忌。
　まだ、今なら戻れる、引き返せる。そんな気持ちが絵里姉ちゃんにその言葉を言わせているのだろう。
　すでに先から腺液を滴らせているモノの上で、白い尻たぶが悩ましげに揺れていた。それがほんの少し下に落ちるだけで、俺と絵里姉ちゃんは一線を越えてしまう。そう認識するだけでぞくぞくするような興奮が背筋を駆けのぼって、きつくそそり立っているそれを震えさせた。
　俺達の間のにある距離はホントにあとわずかでしかない。絵里姉ちゃんの淡い繁みが頼りない感触で俺の先端をくすぐってしまうくらいの。
　２人の間で張りつめている息づまるような空気を、ため息まじりの甘い声が揺らした。
「カズちゃぁん………」
　さわさわとこそばゆさにもにた気持ち良さがわずかに触れられた先端からはい上がってくる。
　しなやかなラインで反っている背中、そしてあの白い尻の奥で、何度も舐め回したあのいやらしいピンク色の花が、ぱっくりと口を開けて入ってくるモノを今かいまかと待ち望んでいる―――。
　絵里姉ちゃんがどう考えていようと、もう手遅れだ。
　いてもたってもいられなかった。
　けっして言ってはいけないその言葉を吐き出さずにはいられなかった。
「絵里姉ちゃん、入れさせて」
　俺の首筋に埋められた絵里姉ちゃんのせつなそうな横顔に頬をこすりつけ、小さな耳に唇を寄せて囁く。
「絵里姉ちゃんとしたい……絵里姉ちゃんの中に入りたい。絵里姉ちゃんとセックスしたい……」
　一言ひとこと言葉を吐き出すたび、熱い息が耳にぶつかってすぐ目の前にある白い肩がぶるっと震えた。敏感な、とても敏感な絵里姉ちゃんの体。
「いいの……？　カズちゃんの初めて、もらっちゃっていい？」
　困ったような泣き出しそうな顔が俺の目を覗きこんだ。
　うなづくとためらうような言葉とは裏腹の性急な動きで、絵里姉ちゃんの上半身が起き上がる。
　俺の腰をまたいで膝立ちになったまま、ふと何かを思い出したように突然、いろいろ置きっぱなしにしてあったソファの隅を手探りしはじめた。
「……なに？」
　やがて手提げの中から何かを拾い上げると、ちょっとはにかむように笑って
「せっかく、初めて、だから……」
　そう言って、再び膝に腰を下ろすと抱きつくように背中に手を回した。それがどういうことなのか、3度目ともなればもう聞かなくてもわかった。
　手間取りながらも、かちり、と聞き違えようも無い音がする。
　恐る恐る、鈍く痺れはじめていた重い手を、動かしてみる。動きをさえぎるものが無くなった腕はもちろん自由に動いた。体の前にもってくると、冷たくなってしまった両腕を、熱を持った小さな手が優しくさすってくれた。
「はずしちゃって、いいの？」
　照れたように笑っている絵里姉ちゃんに確かめると、まだ重い俺の右手をひっぱりあげて、掌にそっと唇をおしあてた。
「それは、こっちが聞くことだもん。……いい？」
　答える代わりにその掌で絵里姉ちゃんをひきよせてキスをした。
　どっちにしてももう引き返せない。ここでやめてもかえって俺の頭の中は絵里姉ちゃんでいっぱいになってしまうだけだ。もう俺の目には猛るモノをしゃぶりながら腰をゆらしている白い体がくっきり焼きついている。この間よりももっともっと嬉しそうに俺を見上げる扇情的な瞳や、口元や、服を脱ぐとき膝の上でふいに見せた恥ずかしそうな顔も、アソコを舐め回されたときの切なそうな声も、なにもかもがはっきりと刻まれてしまっている。
「カズちゃん……」
　なにより今、膝の上からこっちを見ている顔はぞくぞくするぐらい色っぽくて、たまらなく魅力的で、そのくせどこかいたいけで、こんな矛盾だらけの絵里姉ちゃんを見なかった事にするなんてとうてい出来そうになかった。
「………ごめんね……」
　なんで絵里姉ちゃんは泣きそうな顔をしてるんだろう？
　でもこんな姉ちゃんをもっと見たいと思ってしまう俺もどこかおかしいのかもしれない。
　目の前で白い体が起き上がった。俺の腰のあたりを膝で挟むようにして尻を持ち上げて、ほっそりとした指で張りつめたモノを引き寄せて位置を調整する。
　細いウエストとは対照的にしっかりとはりだした腰が目の前でじれったいくらいゆっくりと降りていく。その動きから目がそらすことができない。
　ぬるりと蕩けた感触が俺の先端に押しつけられる。２人の距離がゼロになる。しらず互いに息を大きく吐き出して、次の瞬間、
「あ、あ………………っ！」
　悲鳴の様な絵里姉ちゃんの声が耳を打った。
　熱く密度のある肉にずるりと根元まで飲み込まれていく。恐ろしく強烈な感覚に飲まれてまぶたの裏が真っ赤に染め上がった。
「う……………っ」
　歯をくいしばらなければ、そのまま一気に放出してしまいそうな激しい快感。
　浅く息を吐きだして薄目をあけると、俺の腰の上にぺったりと座り込んでいる白い体が視界に飛び込んできた。互いの繁みが一部のすき間もなくぴったりとくっついている。
　目には見えないけれど、その奥では、絵里姉ちゃんの中にしっかりと俺のモノが打ち込まれている。
　ほんとうに。
　俺が、絵里姉ちゃんの中、に。
　実感すると同時に、みっちりとした粘膜に包まれたそれが更に大きく膨れ上がった。
　くっ、と先に何かを押し上げる感覚。それを探るためにすき間なく繋がっていた部分をさらに押しつける
「はぁ…………っ」
　言葉にならない質問に答えるように小さな体がゆるく反って甘い甘いため息がこぼれ落ちた。間違えようもない。絵里姉ちゃんの熱い通路のつきあたり、一番奥に俺の先端が押しつけられている。
「……すげ、熱い」
　思わずつぶやくと、絵里姉ちゃんは切なそうに閉じていた薄く目をひらいて、声をださずに、ばか、と囁いた。
　身動きひとつしなくても、絵里姉ちゃんが呼吸するたびまったく同じ動きできゅうっと中が俺をしぼりあげてくる。
　信じられない。
　セックスって、ほんとに、こんなに近くに…こんなにもぴったりとくっついてしまうんだ。
　こうしてただ繋がっているだけで、腰の奥でじんじん疼く快楽に息がつまりそうだった。
「カズちゃぁん……」
　浅い息をつきながら、絵里姉ちゃんが潤みきった目で俺を見つめている。いつもの気の強い絵里姉ちゃんが嘘みたいだ。腕を伸ばして、小さな体を抱きしめる。両腕にすっぽりと収まってしまう絵里姉ちゃんはどこにふれても柔らかくて頼りなくて、ただ俺と繋がっている部分だけが驚くような熱さでしっかりしがみついてくる。
　眩暈みたいに飲み込まれた部分からじわじわとにじみ出す快楽と、体の奥底からこみあげてくるこの間もわずかに胸をかすめていた愛しさとしか言い様がない気持ち……それらを処理しきれずに、かすれた声で絵里姉ちゃんの名前を呼ぶ。
　そうすることがまるで当たり前のように、見つめ合って唇を重ねた。舌と舌さえも絡み合わせて、しっかりと抱きあって、もう近づきようもないくらいぴったりくっついてしまっているというのに、もっともっとすき間なく重なりたいという気持ちに突き動かされて、めいっぱい飲み込まれているはずの腰をゆすりあげる。
「あぁ…あ、カズちゃん……すごい、なか、いっぱぃ、あっ、だめぇ…」
　うわごとみたいに舌ったらずな声に誘われるように、滑らかな首筋や耳にむさぼるように唇を這わせた。汗の味しかしないはずなのに、ほんとにこんなときは甘く感じるんだ、なんてと思いながら、ちいさくはねる身体におもうまま吸いつき、白い肌に淡い痕をつけた。
　絵里姉ちゃんが砂糖菓子みたいに甘い声をあげて見悶えると、そのわずかな動きで擦れた部分から鈍く疼くような感覚が沸き上がってくる。何度も何度もキスのたびにじれったい痺れが腰にわだかまり、繰り返すうちたまらなくなって腰を突き上げていた。先端で真っ白な快楽がはじけて、意識を焼く。初めて味わうその感覚に溺れるように、気がつくとぎこちないその動きを止めることができなくなっていた。
　小さな体を押し上げるたび、ずるり、と絵里姉ちゃんの中から卑猥な音が聞こえる。いや、それは耳に聞こえる音じゃない。擦れあう肌からじかに伝わってくる音。
　こんなにぬるぬるとよくすべるのに、ぎゅうっと締めつけてくる密着感は全く減らない。こんな、気持よさがあるなんて。ただ腰をぶつけ合うだけの動きが、こんなにも気持ちイイだなんて信じられない。
　みっちり充血して腫れあがった胎内は腰を引けば引き止めるように絡みつき、突き出せば拒むように張りつめた先端を容赦なくこねあげた。どう動いても、どうかき回しても、どろどろに溶け出すような快感に容赦なく背骨ごと焼かれてしまう。ぶつかり合う体さえ意識できず、いやらしい音を立ててこすれあう快楽のためだけの部品になっていく。
「あぁ、あ、ダメ、カズちゃぁん、あぁん、あぁ、あ………っ」
　耳元でひっきりなしに鳴り響く甘い嬌声がなんとか輪郭を取り戻そうとする俺の意識を溶かした。
　もう自分がどうしているのかもわからない。ただぶつかり合う部分から火花のような快感が数え切れないほど次々とはじけて、たまらない気持よさにただ歯を食いしばった。
「絵里姉ちゃん………っ」
　閉じたままだった瞼をあけて、腕の中の絵里姉ちゃんをこの目で確かめる。
　跳ねる体を両腕でしっかり抱え込んで、まるで狂ったケモノのように絵里姉ちゃんを貪っている。犯している。信じられないくらい熱く溶けたからだの一番奥までを、俺の性器で犯しぬいている。こみあげてくる悦びが、生まれる快感を更に上へと押し上げ、なんとかこの瞬間を引き伸ばそうとギリギリのところで堪えている俺の努力の全てを、無に返そうとしていた。
「絵里姉ちゃん、ねえちゃん…………っもう………俺……っ」
　まだ終わりたくないと焦る気持ちとは裏腹に体は早くも絶頂に向かって走り出しはじめていた。もっとこの焼けつくような気持よさと、俺の全てを飲む込むいやらしい体の全てを味わい尽くしたいのに、頭と体を支配する凄絶な欲望に操られて腰を激しくぶつけていく。
「だめ、おく、そんなにしちゃ、あ、だめぇ、だめなの、ああ！　あぁぁ……っ！」
　何がダメなのか悲鳴のように叫んでいるというのに、絵里姉ちゃんのそこは暴れ回る俺を押さえ込むようにぐいぐい絡みついて、逃がすまいとしているかのようだった。そんなふうにされたらもうひとたまりもなかった。どんな我慢も、努力も、全てが無意味になって、小さな体をばらばらにしかねない激しさで深く、奥まで全てを打ち砕く。
「ダメだ、いく…………っ」
　その瞬間はすぐに訪れた。
　子宮を突き破るように深く深く食い込ませると同時に目もくらむような快感に飲み込まれて、吐き出しているはずなのに、体の中まで吸い出されているかのようなそんな錯覚に平衡感覚を失う。
「ぅあ、あ、あああ……………っ」
　体中が激しく震え、光にも似たまばゆい快楽のなかに全てがかき消えた。