嘘 |
【 第3話 】
待ち合わせのコンビニで、高原は私の顔を見るなりにやっと笑い、頭のてっぺんから足の先までを視線でなでおろした。 「よしよし、ちゃんと来たな」 「なによ、それ」 突然値踏みされたみたいでちょっとカチンときた。 高原はそんな私を気にするでもなく、じゃ、行くか、とさっさと出口に向かった。学校帰りにそのまま寄ったらしい制服姿の背中を慌てて追いかける。 「いや、家って言ってたから、もしかしたら怖気づいて来ないかも、とちょっと思ってた」 「そんなわけないでしょ。時間あるから着替えてきただけだもん」 「うん、私服姿はじめて見た。ミニスカいいねぇ〜」 「……なんかその言い方オヤヂくさいよ」 高原の家は、コンビニから自転車で10分くらいの場所にあった。 道もそんなに難しくない。帰りは一人でも迷わずに帰れそうだった。 「ほい、ここ俺の部屋。ちょい待ってて。麦茶でも持ってくるわ」 どこにでもありそうなごく普通の一軒家の、2階の階段あがってすぐの部屋が高原の部屋だった。 積み重ねられた本と、CDと、青いカーテンと、グレーのベッドカバー。まだ明るい時間なので、カーテンは大きな窓の左右で出番を待っている。薄いレースのカーテン越しに柔らかな光が部屋いっぱいに満ちて、これからすることを思うと、なんだかその明るさが後ろめたいような気もした。 雑然とどこかとっちらかってる雰囲気なのが弟の部屋に似ていて、いかにも男の子の部屋ってかんじがした。 「ん? なんか面白いもんでもあった? 立ってないでそのへんに座れよ」 部屋をあちこち見回していたら、グラスを両手に持って上がってきた高原に後ろから声をかけられた。 ローテーブル代わりに使っているらしい背の低いワゴンの脇に場所をみつけて座る。長身をかがめた高原が私の前に冷えた麦茶のグラスを置き、ついでにちらりと私の顔を覗き込んだ。 「もしかして緊張してる?」 「しまくり。だって、男の子の部屋に来るの、初めてなんだもん」 「名取、弟いるんだろ」 「だって、高原は弟じゃないもん」 「だな」 笑いながら高原はベッドの横で立ったまま、制服の上着を脱いだ。積み重ねられた本の上にグレーのジャケットが無造作に投げ出される。ほどなく緩めたネクタイがそこに重なった。学校で嫌というほど見慣れた白いワイシャツが、今日ばかりはひどく生々しいものに思えた。 私の隣ではなくベッドのふちに腰をおろし、シャツの前を軽くはだけた高原は教室でみるよりずっと男の人っぽかった。昨日のことがあるから、そう見えてしまうだけなんだろうか。目のやり場にこまるような、でも見ずにはいられないような、矛盾した気持ちで視線がちらちら泳いだ。 「そんな困った顔すんなって。なんだか悪いことしてる気になるだろ」 高原は冗談っぽく眉をつりあげて、私においで、と手を差しのべた。 「……悪いこと、するんじゃないの?」 高原は静かな表情で私を見ている。なのに私の心臓はどくりと大きく波打ちはじめた。 なんとなく、この部屋に来たら高原は私の隣にでも座ってキスをして、おもむろに押し倒してくるんじゃないかってぼんやりと想像していた。 でもそんな気配はみじんもない。目の前にあるのは、私自身の意志を待つ高原の大きな掌だけだ。 ただここで待っていたって、望むものは手に入らない。 そのことだけははっきりしている。だったら。 つばを飲み込んでから、私は立ち上がった。ベッドまではほんの1、2歩。でも、たぶんこれが引き返せる最後の線。 優しいだけではない深い笑みが高原の口元に刻まれる。そらされることなく向けられている瞳に吸い寄せられるように踏み出して、大きな掌にそっと自分の手を重ねた。 「名取は悪いコト、してほしいんだ? じゃあ、どんなことして欲しいのか聞かないとな」 低い声が私に魔法をかける。こんなからかうような言葉で、胸の奥が震えてしまう。言い返さなきゃ、と口を開いた瞬間、手を強く引っぱられていた。 バランスをくずして、高原の体に折り重なるようにしてベッドに倒れ込んでしまう。 昨日とおなじくらい…いやもっと間近に、いたずらっぽい表情を浮かべた高原の顔があった。 「……のっかっちゃてるけど、重くない?」 昨日強く抱きしめられた時も思ったのだけれど、直に感じる男の子の体は思ったよりも硬くごつごつと跳ね返すような感じがした。近すぎる距離がみょうに照れくさくて、つい誤魔化すようにどうでもいいことが口をついて出てきた。 「そんな心配するほど重くないって。名取の気弱な顔ってめちゃくちゃそそるな。すげー意地悪したくなる」 「なに言ってるのよ」 「昨日みたいに、エロい顔させたい。しても、いい?」 ふっと瞳の色が濃く鋭くなった。 低い声とからまりあうように私の中に忍び込み、胸の奥に突き刺さって首の後ろを熱く痺れさせる。 昨日とおなじだ。この視線と声が私の心と体を縫いとめて、身動きできなくしてしまった。教室で体中を埋め尽くしたあの激しい感覚を求めて、全身が小さくさざめきだす。 「……そのために、来たんだもん。気持ちいいこと、いっぱい、して」 こんなこと、初めてのオンナノコが言うことじゃない。でも、恥ずかしがって、もったいつけたとしても、高原はもうとっくに私の本心を知っている。今更誤魔化すほうが恥ずかしいことのように思えた。 「俺、名取のそうやって素直に言えるところが好きだな。いまのでいっぺんに勃った」 自分からねだる気恥ずかしさが、その言葉でどこかにかき消えた。 重なりあった体の熱は、知らない間にからまりあって更に温度をあげていく。 ごく自然に見つめあい、お互いに顔を寄せて唇を重ねていた。 2度、3度とついばむように繰り返す。 柔らかく頼りない甘さに待ちきれなくて薄く唇が開いてしまう。 舌と舌が絡まりあうと、覚えたばかりの甘い気持ちよさが一気に押し寄せてきて、喉から声が漏れてしまった。 「んん……」 熱く柔らかく口の中が溶かされていくにつれ次第に体の力も抜けていく。唇が離れようとするのを感じた瞬間、自分から追いかけてしまっていた。かすかな笑いの気配とともに、また溶ける気持ちよさが口いっぱいに広がった。私はキスに夢中になっていた。 「名取、キス好きだよな」 ようやく深い息をついて唇と唇が離れる。 ウエストに回されていた高原の腕に力が入って、腰が強く押しつけられた。 「あ……」 ズボンの縫い目ばかりではない、肌を押し上げる違和感。 それが何であるかに思いいたって思わず顔をあげると、にやにや笑いの高原と視線がぶつかった。 「……これ、高原……の?」 「そ。これでも、夕べ一度抜いたんだぜ?」 わざと顔を寄せて、瞳をまっすぐに覗き込む。 「せっかくとっておこうと思ったのに、名取がメールでオナニーした、なんていうから、教室でのいやらしいイキ顔思い出して、我慢できなくなった」 「ば、ばか、なに言ってるのよ……っ」 かっと一気に顔が熱くなった。 とんでもないことを言い出す口を上からふさごうとしたら、あっというまに手首をつかまれて、逆に身動きできなくなってしまった。 「なあ。夕べ、俺のこと思い出してオナニーした?」 逃げることができない私の耳に、低い声が流し込まれる 「やぁ……」 「俺は名取の声を思い出しながらしたぜ。すげー気持ちよかった。男がどんなふうにオナニーするか知ってる?」 「えぇぇっ? ど、どんなふうに……って……知らないよ、そんなの」 昨日私が高原の手で与えられた快楽を思い出しながらお風呂場でしたように、高原も自分で、した。 私だけが一方的に愛撫されるばかりだったあんな行為で、そんなこと、ありえるのだろうか。 「教えてやろっか?」 意味深な笑みをうかべて、高原はゆっくりと指先で私の頬を撫ではじめた。 「男の大きくなったの見たことある?」 「…ない」 「じゃあ、想像して」 「見たことないのにどうやって?」 「今名取のおなかに当たってるの、棒みたいになってるのわかるだろ?」 ほら、とつかまれた手が2人のからだの間に押し込まれる。少しお腹のあたりを浮かせ探ってみると、掌に熱く脈打ってはりつめたものを感じた。 昨日もこんなふうになって体にあたってた…。思い出すと、なぜか体の奥がじわりと熱く滲んだ。 「もっとしっかりさわってみ。……どうなってる?」 言われるまでもなく、わきあがってくる好奇心にまかせて手を動かしはじめる。 ぴったりとあてがって、さするように撫でてみた。注意ぶかく指先でなぞると、ぼんやりとその硬さや先の丸さなどが布越しに伝わってきた。 「……かたくて、すごく、太い……びくびく震えてるよ……」 はじめて触るそれが不思議でしょうがない。 ぎこちなく撫で回しながら、付け根のあたりとおぼしき場所から先のほうまで確かめてみたら、その思いがけない大きさに、私は今更のように怖気づきそうになった。 「ねえ……こうやって、触ると高原も気持ちイイの?」 時々顔をしかめるようにしてるのに気づいてたずねると、高原はちょっと照れたようにうん、と頷いた。 「自分でするときは、もっとしっかり握って上下に擦ってる、けど……っ」 こんなふうかな?と上からかるく握るようにした手を動かしてみる。 ほんとにこんなことで男の人が気持ちよくなれるのか疑問だったけれど、たしかに手の中のモノはどんどん硬さを増している…ような気がする。 時折声をこらえるように顔をしかめる高原が妙に色っぽくてドキドキした。つい見とれていたら、ふっと目を細めた高原からささやかれた言葉に、一気に頭の中が沸騰しそうになった。 「夕べはぬるぬるになってた名取のアソコと、すげーえっちな声と、感じてるときのめちゃくちゃカワイイ顔思い出しながら、今名取がしてくれてるみたいに自分で擦ってたんだ」 熱っぽい吐息が頬にかかる。けっして大きくはない低めの声が、ゆるゆると響いて意識を侵食していく。 「先走りがどんどん出て、ぬるぬるして、名取に昨日教室でしたよりもっともっとやらしいことしてるの想像しながら、さきっぽからびゅって精液出してイッたの。マジですげー気持ちよかったぜ?」 「やぁ……」 あまりにも生々しい描写に頭の中が真っ白になる。 語られた言葉を裏づけるように掌に感じるそれがびくん、と跳ねた瞬間、慌てて手を引き抜いて、叫んでいた。 「た、高原のえっち……っ」 「オナニーなんだからエッチにきまってるだろ」 首筋の肌を這うようにして響いてくる笑い声が、まるで愛撫のように熱っぽい体を刺激した。 「名取は? どんなふうに触ってる?」 「…知らない…言わないもん……」 「言わないんじゃなくて、言えない?」 「…………」 心臓が恐ろしいくらい大きな音で鳴っていた。 教室のときと同じだ。ひどくドキドキして、息苦しいくらいで、でも嫌じゃない。覗き込む瞳に囚われて、体中がしびれていく。 「じゃあ、聞くからしたかどうかだけ教えて」 ささやくような声なのにくっきりと聞こえるその響きが、私の鼓膜をはじいて頭の奥に甘い波紋を広げていく。 大きな掌は温かさを伝えるように、私の背中から腰にかけてのラインを撫でている。じんわりと暖かくて気持ちよくて、そのくせ意識の一部分だけがぴんと張りつめて次第に冴えてゆくようだった。 「オナニーするときはクリ触るの?」 いきなり核心を突く質問が降ってきた。私はちょっとだけ息をのんで、素直に頷いた。 「……うん」 「クリだけ? 中は?」 「……した、けど……あんまり気持ちよくなかった…」 「乳首は?」 「…………」 「お風呂でしたって言ってたよな。洗いながらいじったり、しなかった?」 「…………した…」 どんどん声が小さくなってしまう。こんなことまで話すの?って思う気持ちと、高原だって自分のオナニーのことを話してくれたんだから、私もちゃんと言わなきゃって気持ちが振り子みたいに言ったりきたりする。 「俺が教室でしてあげたみたいに、お風呂場で乳首とクリいじってたんだ?」 低い声であらためて確認されると、恥ずかしさで体が小さく震えてしまった。もう、とうてい高原の顔をみることなどできない。胸に顔をおしつけるようにしてぎゅっと目を閉じたら、それを待っていたかのようにいつのまにか肩を撫でていた手で、敏感な耳のふちを指先ですっと軽くなぞりあげられた。 声にならない音が喉の奥から漏れてしまった。 「どんな風にクリ触るの? 指で転がす?」 重ねてたずねながら耳をなぞる動きは止まらない。答える声が震えてしまう。 「……軽く、そっとなでる……」 「皮の上から? それとも剥いちゃう?」 「……よけて…してる…」 あまりに具体的な質問に羞恥心をかきたてられて、体中がひどく火照っていた。落ち着かない気分のまま、見かけよりもたくましい高原の上でついもぞもぞ体を動かしてしまう。 もしかして、聞きながら私がオナニーしてるところを想像したりとか、してるのかな。 気になってちらっと見あげてみたら、それをまちかねていたような高原と目が合って、ちゅっ、と右手の指先を吸われた。 「クリでオナニーするの気持ちいい?」 指先に感じる高原の唇はとても柔らかくて頼りない。 「……うん……でも……」 軽くついばむように濡れた熱が指先でいくつもはじける。吸いついたり、軽く押し当てて滑らせたり、まるで唇で愛撫しているみたい。 そして、その唇が触れてる指先は、夕べ、私がクリトリスを撫でてオナニーしていた指で。 「…………高原が、してくれるほうが、気持ちイイって………思った…」 考えすぎなのはわかっていたけれど、意識したとたん、体の奥がじわっと熱く疼いて、気がつくとそう口走っていた。 「名取、かわいい」 熱い口唇が耳のふちをかすった。 「あっ」 びくん、と体が大きく震えた。 起き上がろうとする頭をしっかりと押さえ込まれ、焼けるような感触がためらうことなく耳から首筋に移動していく。ただそれだけことで、こんなにもたやすく反応してしまう自分がとても恥ずかしかった。 「名取の体すごく熱くなってる。さっきからもじもじお尻動かして、どうした?」 もちろん答えることなんて出来ない。にらんでみたけど、あんまり効果はないみたいだった。 「高原って、めちゃくちゃイジワル」 「何で?」 くすくす笑いが振動になってぴったり重なった胸から響いてくる。 「恥ずかしいことばっかり、聞いてくるんだもん。はやく、して、ほしいのに」 「もうはじまってるって。まだ全然触ってないけど、名取、昨日みたいにドキドキしてるだろ?」 浮かんでいる笑みはひどく魅力的で、奥になにかを隠していそうで、こんな目で見つめられてドキドキしない女の子なんてきっといない。 「……うん……」 「恥ずかしいこと言わされて、お尻もじもじさせて……ココ、濡らしてるだろ?」 「あ……っ」 何の前触れもなく、スカートの裾から熱い手がもぐりこんできた。太ももの裏側からお尻の下…足の付け根あたりを撫で上げながら、びくびく震える私の顔をじっと見ている。 「しらない……っ」 「そんなこと言われたら、じかに調べちゃうよ?」 「…………」 自分で言うよりも、そっちのほうが恥ずかしくないかもしれない、なんてふと思ってしまった。 「じゃあ、もう少し、足開いて」 一瞬の逡巡をたやすく看破して、高原は笑った。 どうして彼には私が一番恥ずかしいと思うことがわかってしまうんだろう。 無理やりその手で広げてくれればいいのに、自分で足を開くなんて、まるで自分から触ってってお願いしてるみたいだ。 「……ん」 でも、よく考えてみたら。 私はそうされたいと思ってるのかもしれない。 だって昨日自分でそう言ったんだもの。 恥ずかしいことを命令されて。 逆らえなくて。 気持ちいいことを、されたい、って。 「……触ってぇ……」 言われる何もかもが恥ずかしくて、気持ちよくて、頭がぼんやりして、難しいことなどなにも考えられない。 わずかに疼く羞恥心をむりやり押しやって、のろのろと、投げ出された高原の足を大きくまたぐようにひざを開いた。 「名取、やらし……」 かすれた高原の声がすごく色っぽい。今まで男の子を色っぽいだなんて思ったことなかったのに。昨日からなんどもそう感じてしまってる。あの放課後から、私の周りのなにもかもが変わってしまったような気がした。 ベッドに仰向けで横たわっている高原の上で、ゆるく熱い息を吐き出しながらかるく腰を浮かせて、お尻を突き出すような格好になる。 大きな手が短いスカートを捲り上げて、薄い下着に包まれたお尻をゆっくりと撫でた。 「めちゃくちゃはずかしいよ……」 つきだされたお尻の奥が、その淡い気持ちよさに反応してじりじりと熱を持ちはじめる。触られたらあっという間に溶けて気持ちよくなってしまう場所。夕べ待ちきれず自分で触ってしまったいやらしい部分。 「恥ずかしいと、感じちゃうんだろ? 名取は」 薄く口元をほころばせて、高原は目を細める。ぞくぞくする。いつもの頼れる楽しい男の子とはちがう、容赦のない男の人の顔。 ひどいことされそうで怖いのに、心のどこかが待ってしまっている。決して逆らえないあの張りつめた空気と昂ぶりにまた巻き込まれてしまいたくなる。 「ここもこんなに熱くして……」 すっと、指先が下着の真ん中を撫で上げた。 「あっ」 ただそれだけで、ぬるりとすべる感じがした。 「すごいね。下着越しなのにもうぬるぬるになってる…。ちょっとオナニーのこと聞いただけなのにね」 そのままごく軽い感触が、布の上から襞をわりひらくように行き来する。音にならないくちゅり、というかすかな気配に気づいた瞬間、全身が燃えるように熱くなった。 「あっ、あ……っ、だめぇ……」 自分の息の音や心臓の音が信じられないほどくっきりと聞こえてくる。 「いやらしいこと、話すの好きだろ?」 「や、いや……そんなの、好きじゃない……」 「ほんとに? 話しながら、感じちゃってもじもじしてたんじゃないの?」 「ちが……」 低い声でといつめる間も、指先は滑らかな動きで布越しに襞の内側を撫で回すのをやめなかった。けれども決して敏感になっている芽には触れようとはしない。 「自分でクリトリス触ってる時のこと思い出したりしなかった?」 ぐるりと指がかたく膨らんだそれの周りをなぞる。 「やぁ……」 もどかしくて、甘いため息が漏れた。はやく昨日のように、そこを触って欲しい。言葉にできないうらめしさで、甘えるように胸をおしつけてしまう。 「やっぱりイジワル、だよ……ぁっ……」 「名取がちゃんと返事しないからだよ。ほら、正直に言ってみ?」 つぷ、と指先が水分を含んで重たくなった布の中心に食い込んだ。 高原は憎らしいくらいに余裕たっぷりな表情で私を見上げている。その瞳をみているとただもう恥ずかしさをかきたてられて、いてもたってもいられなくて、半ばやけっぱちで、自分から唇をおしつけていた。 「ん……」 じれったさをぶつけるように繰り返しキスをした。 でも高原の唇は閉じたまま開かない。なんだか相手にされてないみたいで、もどかしくて、自分から舌を押し込んだ。柔らかな舌に自分の舌を重ねて、高原がしてくれたのをまねて絡めてみたりなぞりあげてみたりしてみる。されるがままに動いている高原の舌はやっぱり気持ちよくて、でもちょっと物足りない。 どうしようか。迷って舌を引いた瞬間、頭をぐっと押さえ込まれた。 下から信じられないほど深く、舌が入り込んできた。知らず喉がなる。口の内側の粘膜をなめまわされ、舌をきつく吸われ、その突然の気持ちよさに体がびくびく震えた。 私がぐったりと脱力するまで、そのキスは終わらなかった。 「まったく……」 何がおかしいのか、高原は喉を鳴らして笑っていた。それにあわせて上に載っている私もふわふわと揺れる。 「ほら、腕ついて」 言われるまま高原の顔の横に手をついて、もたれていた上半身をもちあげる。 のろのろとした私の動きとは対照的に、高原は手早くカットソーを胸の上までまくりあげ、あらわになったブラも一押しで押し下げた。 重力に従ってぷるん、と白いふくらみが釣鐘型にこぼれ出る。 「あっ、や……」 驚いたけど両腕をついているのでとっさに隠せない。 片手がすっと乳首を摘まんで、ふくらみごとふるふると揺らし始める。もうとっくにかたくなってしまっている私の乳首。振動とともに鈍い快感が胸全体にひろがっていく。小刻みに揺らしながらも思い出したように先を撫でられて、甘い声を上げてしまった。 「ふぁ……あぁっ……」 「キスなんかでごまかそうとして。でも、すげー可愛かったから、今回だけは勘弁してやる」 「あ……っ!」 びりっと、電気のような気持ちよさが突然下半身から走ってきて、体がきつくのけぞった。 待ちかねていた快感。 クリトリスが高原の指に押しつぶされていた。布の下に隠れている小さくとがったそれは押されるとぬるりと指の下から逃げ出してしまう。それをまたつかまえて押しつぶす。ぬるぬると何度もそれが繰り返される。 「あっ、あぁんっ、たかはらぁ……っ」 鋭く容赦なくつきあげてくるあまりに強い快感に、気持ちいいのに腰が逃げるように前にせり出していく。もちろん逃げても逃げても、その気持ちよさはぴったりと私にはりついてのがれようもない。うつむくとブラとたくし上げた服の間からこぼれている胸が、指先でくりくりとこねられているのが見えて、たまらなくいやらしかった。 胸からおなかの奥底に流れ落ちていく快感と、突き出したお尻の間から絶え間なく全身に広がっていく愉悦とがわかちようもなくからみあって、私の意識を溶かしていく。 「はっ、あ………っ、あぁっ、だめ、たかはらぁ……っ、く…………ぅん………」 「……もっと、感じていいよ」 高原の声が、さっきとは違う場所から聞こえて、 「なに……あ…………っ!」 胸の先がぬるりと熱いものに吸い上げられた。 「あ、やっ、たか、はら………っ」 とろとろに柔らかくて弾力があるものが、敏感な乳首の先をつつくようになぞっていた。かと思うときつく吸い取られ、痛みにもにた感覚の中でひときわ強くはじける快感ににたまらず声をあげる。 「やぁっ、あ……っ」 何がおきてるのかと目をあけると、高原が私の胸にむしゃぶりついていた。熱く濡れた口の中で、小さな木の実みたいにかたくなった私の乳首が吸われている。舌先で転がされ、次の瞬間には甘噛みされ、絶え間なく弄ばれる。胸元の頭が小さく動くたびにびりびりとしびれるような気持ちよさが胸からあふれ出して、私を鳴かせた。 「なんか、裸よりやらしいな、今の名取のカッコ」 ちゅぅっと乳首が吸われて引っ張られる。ぎりぎりまで引き伸ばされたところで離されるとふるんと弾んで鈍い快楽が生まれる。 「やっ、なに……あぅっ」 また同じように乳首が引っ張られる。誰のせいよ、って思っても言葉にならない。高原の唇で引き伸ばされている私の胸はとてもいやらしくて、見てるだけでくらくらした。 こんなふうにされると、気持ちよくなっちゃうなんて、知らなかった。 「ぁんっ、あっ、たかはら……あぁぁっ!」 胸に気をとられてる間に、高原の手がおなかのほうから下着の中に滑り込んできた。 あっという間に焼けるような快感が突き上げてくる。昨日と同じ、いやもっと大きく激しい熱でみるまに熱く溶け出していく。 「あっ、だめ……そんなにしたら………っ……あぁんっ」 「今日はもっと声聞かせて。好きなだけ声だしていいよ」 「や……あ………っ……は、はずかしい………っ」 「恥ずかしがってる名取、すげーやらしくてそそる。声も、顔も全部めちゃくちゃ可愛い。興奮する」 あふれ出した蜜でぬるぬるになったそこを高原の指が自由自在に動き回っている。みるまに溢れだした気持ちよさで、どれくらい自分が濡らしてしまってるのかがよくわかった。指先で蜜を掬い取られ、いたるところにまぶしつけられて、また奥から溢れさせてしまう。その繰り返し。 乳首を舌で転がされながら、ぷっくりと膨らんだクリの付け根を撫でられたら、もう私はシーツをつかんで、その快感に耐えるしかなかった。 「あっ、あ……っ、だめ、そんなにしたら……いっちゃう………っ」 「もう?」 「だって……だって、あぁっ……ずるい、やっ、ぁ…っ……あぁっ、だめぇ……っ」 「だめ、じゃなくて、いい、だろ? お尻がずっといやらしく動いてる。昨日みたいにイキたかったら、『もっとして』って言ってごらん」 気持ちよくて、よすぎて、腕も崩してしまいたいのに胸の下には高原の頭があるからそれもできなくて、 「………ばかぁ……っ」 顔を伏せて歯を食いしばろうとしても、指の動きにあわせて吐息と声が一緒くたに漏れてしまう。 また私だけって一瞬思ったけど、我慢できなかった。 「あぁんっ、あっ、あ………っ、たかはらぁ……っ…おねがい………っ」 甘えた声が自分でも恥ずかしくて、でも止められない。ぎゅっと目を閉じていたら、胸元からくすり、と小さく笑う気配がした。と、次の瞬間には胸の先から痛みとも快感ともつかないものが一気に駆け上がってきた。 「あ……………っ!」 それが呼び水になったように、すごい快感が下半身でいくつもはじけて、いや、とか、だめ、とか思うまもなく、私は絶頂に押し上げられていた。 「あ! あ………………っ!」 頭の中が真っ白になる。きつくのけぞってどうしようもなくがくがくと震えてしまう。 ゆっくりと自分の体が戻ってくると同時に、力尽きてそのまま横に倒れこんでしまった。 「はぁっ……あ………っ」 ぐったりとして横倒しになったまま余韻で動けない私を、高原が無造作に仰向けに転がす。そして手際よく着ているものを脱がせはじめた。カットソーが上からひきぬかれ、引っかかってるだけだったブラはいうまでもなく、スカートやショーツもあっというまに引きおろされる。 整いきらない荒い息のまま、いわれるままのろのろと反応している間に、私は素っ裸になっていた。 「ごめん……また、わたしばっかり………」 気がつくと膝を割られ、上からのしかかられていた。 高原はまだ制服を着たままで、おなかや内股に制服のざらざらした生地があたっている。我にかえると、自分だけ裸なのがひどく気恥ずかしかった。 「心配しなくても、今日はちゃんと最後までするって」 「じゃあ、高原も、脱いで…」 荒い息のままきれぎれに言うと、高原は口の端をあげていたずらっぽい瞳で私を覗き込んだ。 「男の裸に興味ある?」 「…ちが…っ…」 知ってる、と笑いながら軽くキスをして、高原は起き上がって服を脱ぎ始めた。 興味あるわけではなかったはずなのに、引き締まった体が次第にあらわになっていく姿に、つい見とれてしまう。見慣れた自分の体とはぜんぜん違う男の子の体。私の視線に気づくと、高原はにやにや笑いを浮かべながらこっちに向き直った。 必然的に、ソレが視界に入ってくる。 うわ、と内心叫びながらも、私はさらにまじまじと見入ってしまった。 きっちりと上向きにそそり立っている赤黒い性器。グロテスク、といってもいいかもしれない。たくましい体からぴょこんと生えてる様子は、なんだかとってつけたようにも見えた。 「これが、高原の…?」 「ああ。そうだよ」 布越しに触っただけでははっきりとはわからなかった細部につい目がいってしまう。根元を覆う縮れて硬そうな茂みや、その奥にあるしわしわな袋。張り詰めて血管が浮き出した胴体と頭みたいに膨らんでいるピンク色の先端は、なんだか妙に入り組んだ形をしていた。 はじめてみるものだから仕方ないのかもしれないけど、見ればみるほど不思議なモノには違いなかった。 これが、私の中に入る。指よりも桁ちがいに太くて、冷静に考えてみてもとても入りそうにない。でも、不思議と怖いとは思わなかった。 人並みに最初は痛い、という予備知識があっても、ここまでがずっと気持ちよかったから、なんだかぜんぜんピンとこないのだ。 怖さよりも好奇心が勝ってしまっている。 ふと思い出して顔を上げると、いかにも面白そうに眺めていた視線とぶつかった。 「満足した? じゃあ、今度は俺が見せてもらう番……っと」 言うが早いか、ひょい、と膝を掴みあげられて、あっというまに左右に割り開かれた。恥ずかしい場所が丸見えの格好に慌てて膝を閉じようとしたけれど、高原の腕が深くひっかかる位置にあってかなわない。やみくもに上半身を身悶えさせるしかなかった。 「やぁ、見ちゃや……はずかしいよ……っ、高原のばかぁ……っ」 「昨日は見れなかったけど……すごいことになってるねぇ。こんだけ感じてくれてたら男冥利につきるってもんだ」 火照った場所に冷えた空気が当たっている。高原の視線がそこに注がれてると思うだけで、恥ずかしさで頭の芯までしびれるようだった。 「いや、見ないでぇ………っ」 目を閉じて頭をふりまわしても、聞こえてくる声までさえぎることはできない。 「名取のここ、息をするみたいにひくひくしてる……。一面てらてら光ってて、ピンク色で、襞がぱっくり開いて全部見えてて……すごくいやらしいよ」 「やぁぁ………っ」 閉じた瞼の裏に以前鏡でみた自分の部分がくっきりと浮かび上がった。蜜まみれになって口をあけたぬめるピンク色の花。あまりに卑猥な絵にたまらず体の奥が震えてしまう。 「だめ、だめ、言わないで………っ」 「でも、ここはもっとって返事してるんですけど?」 ぬるん、っとひどく柔らかくてたよりないものが体の中心を撫で上げた。 「ひゃんっ!」 驚いて顔をあげると、高原の顔が開いた足の真ん中に吸い寄せられるように近づいていた。 「や、ちょっ、何……っ」 驚いている私の前で、高原の頭が動く。同時にまた溶けそうなほど柔らかな快感がはじける。信じられない。高原が、私の、あの部分を。 「何してるのっ………くぅんっ」 「ん? 舐めてる。あんまり溢れさせてるから、きれいにしてやろうと思って」 尖らせた舌先が、一度イって硬度をましたままの芽をなぞりあげる。たまらず声をあげている間に、ちゅるん、と襞が吸い込まれる。初めての気持ちよさが次々に下肢から這いあがってきて、私は幾度も腰を跳ね上げて甘い声を上げていた。 「あっ、や……あぁんっ……はぁっ、や、たかはら……っそんなになめちゃ、やんっ、はずかしい……っ」 ちゅっと吸いつく音までくっきりと耳に届いてしまう。知識としては知っていたけれど、舐められることがこんなにも恥ずかしいことだとは思わなかった。汚い、とかどうしよう、とか取り留めのない感情がわけのわからない言葉になって次々に飛び出していく。 「恥ずかしいの、嫌い?」 「あたりまえ……あぁっ!」 ぬるりと指先が体の内側にすべりこんできた。 「熱いね。名取のなか。すごいキツい……きゅんきゅんしてるよ」 長く伸びて男の子らしく節くれだった高原の指。いっぱいに熱をつめこんで火照った胎内はそのごつごつとした感触をはっきりと私に教えた。 「やぁっ……言わないで…っ、指、だめぇ……」 私の声なんてまるで聞こえてないみたいに、ゆっくりゆっくり、深くまで押し込まれる。奥をぞろりとなぞってから、他人を知らない粘膜にその感覚を刷り込むようにゆっくりと抜け出ていく。 「はぁ……あ………っ、やぁ……あぁん………」 高原の指が、私の中に入っている。一番柔らかい場所をかき回している。自分の指とそんな違わないはずなのに、比べ物になんかならない。いやらしい気持ち良さに、全身でその感覚を追ってしまう。 「指一本だけでそんないやらしい声出しちゃダメだろ?」 「だって……あぁっ………気持ち良すぎて……っ」 「中、そんなに感じないって言ってたのにな」 「くぅん……っ!」 思い出したよう小さな芽を舐めあげられ、鋭い快感に体が揺れる。じわじわと指の動きで生まれる快感が次第に密度を増していく。 「指もう一本増やすよ」 ぐい、とさらにきついそこが内側から押し広げられた。気持ちよさが息苦しいような重さにとってかわる。 「痛い?」 つい逃げるように肩がずり上がったのに気づいてか、高原が足の間から顔をあげてたずねた。 「いたく……はないけど、なんか…いっぱいで変なかんじ……」 「体に力入れないで。ゆっくり深呼吸してみ?」 「ん……」 つめていた息を吐き出して、深く空気を吸いこむ。 優しい舌が戸惑う私をなだめるようにちろちろと芽を舐めあげた。 「ぅあんっ!」 きゅん、と湧き上がる甘い感覚に腰が跳ねた。体の中の指がどっと存在感を増す。たった一本、指が増えただけで、体が受け取る感覚はまったく違ってる。甘い気持ちよさとせめぎあうような息苦しさが、私を戸惑わせた。 「あ、はぁ……あぁん……や……あ………」 腫れあがって敏感になった芽を、困惑と、恐怖と、全てを溶かすように、舌先が細かく動いている。卑猥な水音を立てて次々にわきあがっていく快感に、何も考えられなくなる。ただ溢れるままに声をあげながら、ベッドに投げ出した上半身を波打たせるしかなかった。 「はぁっ、あぁんっ、やっ、たかはらぁ………っ」 いつのまにか、指でいっぱいに埋め尽くされたそこからはぬめるような気持ちよさが生まれて私に甘い声をあげさせていた。押し広げられているのか、締めつけているのか自分でもよくわからない。 「すごいな……指食いちぎられそう。オナニーで指入れるときは1本だけ?」 「そう……ん………だって、怖い、から……っ」 「もう俺の指が2本、根元まではいっちゃってるよ……。まだ怖い?」 「こわく、ない………んぁっ!」 自分の指では届かないような奥をずるりと撫でられ、駆け上ってくる気持ちよさに私は背中をのけぞらせて喘いだ。 「じゃあ、もう一本増やすよ」 「え……っ、や、あ……………っ」 半分だけ指が引き抜かれ、押し込まれていた息苦しさが軽くなった。と、ぎりぎりまで広げられていた入り口の筋肉が、さらにぴんと引っ張られる感覚がした。 「力抜いて…」 もういっぱいいっぱいで、これ以上なにも入らないと思っていたはずなのに。 高原の、ごつくて長い指がもう一本脇から強引に割り込んでくる。 限界まで引き伸ばされた入り口がぴりぴりと小さな悲鳴をあげていた。私のそこがほんとうにみしみしと押し広げられていく。 これ以上されたら、破れて、全部壊されてしまうかもしれない。生まれてはじめて感じる怖さに、私は呻いた。 「や、いや、……くるしいよ…ちょっと痛い………っ」 「これで、痛い? 俺のはもっと大きいよ?」 「え……っ」 どこまで入っているか皆目見当さえつかなかったけれど、浅く息をつくわずかな動きにすら、指を押し込まれた下腹部は重く違和感を主張した。深呼吸して体の力を抜かなきゃ、と頭の片隅でわかっていても、初めての感覚に怯える体はまったく思うようにならない。 「ここまででやめとく?」 こわばったまま緩む気配が無いのを察してか、足の間を目一杯押し広げていた指が一旦全部引き抜かれた。 たずねられたけれど、答えは決まっていた。 「嫌。ちゃんと、最後までして」 指はもう入ってはいないはずなのに、そこには奇妙な感覚がはっきりと残ってる。高原のがっちりとした両足の間でそそりたっているそれは、指なんかめじゃないくらい大きくて、怖くないと言えば嘘になってしまう。でも。 「……できるだけ、痛くないように……してね」 限りなく自分勝手でわがままなお願いに、さすがの高原も苦笑していた。 「がんばってみましょ…」 起き上がってまた私に覆いかぶさってくると、顔を覗き込んで優しくキスをしてくれた。 何度も何度も唇や頬や瞼に、ついばむようなキスが降ってくる。まるで甘やかされてるみたいにふんわりと幸せな気持ちになる。 うっとりしている間に、ぬるり、と苦しさのない気持ちイイ指がまた入ってきた。たぶん2本。高原のもこれくらいだったらいいのに。そう思ったけれど、さすがにそれは口に出せなかった。 「少しずつならしていこうな」 「うん……」 目と目を合せたまま、ぬめる胎内をまた長い指でかき回される。 こらえきれず私が声をあげてしまうたび、そらされる気配のない濃い色の瞳が嬉しそうに細められる。それは決して甘くて優しいだけのものではなくて、その奥でまたたく激しく鋭い光に貫かれる。 間近で快感にゆがむ顔を見られる気恥ずかしさより、この目でじっと見つめられる嬉しさが勝ってしまう。 指は急に3本に増えたり、増えたとおもうとまた2本に戻ったり、同時にクリが押しつぶされたり、気持ちよさも息苦しさもなにもかもが予想できないタイミングでくりかえされる。こらえきれずつい目を閉じてしまっても、喘ぎ声をあげながら、薄目をあけて、見下ろす高原をいくども確かめた。 「高原ぁ……っ」 開いた足の間で渦巻いている快感がどんどん大きくうねるような波になっていく。今まで知っている快楽よりもっと深いものが、指でなぞられている奥で渦を巻いている。すごくいやらしくて、すごく気持ちイイことを、今、している。 怖いけれど、やめてほしくない。 「痛い?」 くん、っといっぱいに押し広げられて奥までねじ込まれる感覚がして、ぞくぞくと痺れる快感にたまらず声を上げる。 「んぁっ……いたくなぃ……あぁ」 「そう……もう、指3本入ってるよ。さっきは痛いって言ってたのにもう慣れちゃったんだね。うねうねからみついてくるよ。名取のココ、いっぱいに広げられるのが好きなんだね」 「えっ……あぅっ……、うそ……っ」 「嘘じゃないよ。見てみる? 俺の指、しっかりくわえこんでひくひくしてる。すっげーやらしい…」 言われて意識すればするほど、指と擦られる感覚をはっきりと感じてしまう。 「ばかぁ……っ、そんなこと、言わないでよ……っ」 叫んだ瞬間、するりと指が私の中から抜け出てしまった。突然のことに驚いている私を尻目に、高原は起き上がって用意してあった避妊具に手を伸ばしていた。 「そろそろ大丈夫そうだから、ちょっと待ってな」 ビニールを噛み切りながら、いたずらっぽく笑う。未知の快楽を初めてあじわってるまっ最中に放り出されて恨めしい気持ちの私を特に気にするようすもない。 手際よく震えてとても大きくなって震えているモノに薄いゴムをするするとかぶせていく。 すごく馴れてるみたい。そう思った瞬間、質問は口から飛び出してしまっていた。 「高原って、もしかして彼女いるの?」 根元までしっかりと伸ばしていた手が止まった。心底びっくりした顔で私を見て、そして、急に笑い出した。 「あのさぁ、名取、それって、すっげー今更な質問じゃねぇ?」 「あー、うん、そうだけど……」 くっくっと喉をならしながら、膝を割って再びのしかかってくる。人懐っこく笑み崩れた目元にの柔らかそうな前髪がさらりとかかる。 「そりゃ、居たらこんなことしてないけどさ。……それにしても、急になに? やっぱり怖くなった?」 大きな掌が胸を包み込んで、知らない間にじりじりと疼きだしていた乳首をやんわりと転がす。感じきって敏感になったままの体にはただそれだけでも十分刺激的な愛撫だった。 「あぅ……ん、ちが……もし、いたら、悪いな、って……あん……」 「へぇ…、いたらここでやめる、とは言わないんだ?」 「だって………。……高原の、いじわるぅ……」 もう引き返せる段階なんてとっくに通り越してしまってる。高原だってそれはわかってるはずだ。すっかりかたくなってしまった乳首をほぐすように指で捏ね上げながら、にやにや笑ってるのがなによりの証拠。 「もし万が一いたとしても、それは名取が心配するようなことじゃない。気にすんな」 「……ん……」 妙にきっぱりと言い切った口調に、ほんのすこし、引っかかるものを感じたけれど、 「ぁんっ!」 降りてきた唇にほぐれた乳首をにゅるんと吸い上げられてしまったら、もうまともに何かを考えることなんてできなかった。大きな掌でさするように体中を撫でられて、甘いため息をもらしながら身悶える。 「高原ぁ……」 また唇が重なって声が閉じ込められる。 同時に開いた足の間からとろけるような気持ちよさがわきあがる。なにか硬くて滑らかなものが蜜まみれのクリトリスを押しつぶし、そのまま襞の間をぬるぬるとかきわけていったりきたりする。 「んぅ……んふ……んん……」 クリトリスにひっかかるたび、強い快感が生まれて、いつのまにかその動きを追うように、おずおずと腰が動いていた。 「はぁ…あっ、たかはら……あぁん……」 「名取のここ、すごい溢れてるよ。まだ入れてないのに、俺のびしょびしょになってる…」 かすれ気味の声が降ってくる。それで、私はそこにあたっているのが高原のモノだとやっと気づいた。すべるたびに生まれるぬめるような気持ちよさが、いかにもお互いのココがそのための器官なのだと主張しているような気がした。 「や……だって、こうされるの、すごく……あん……気持ちいい……」 「俺のでクリ擦られるの気持ちいいの?」 「…うん、きもちいい……ジンジンするの……」 セックスの気持ちよさってこういうことなんだろうか。自分から膝先を大きく開いて、更にそこをつきだすようなことさえしてしまう。 「名取。目あけて」 とろとろに溶けていきそうな意識の片隅にそんな声が忍び込んできた。 言われるままにいつのまにか閉じていた目をあけて、すぐ近くの濡れた色の瞳を見つめかえす。 「な……………ッ!」 なに?と言いかけた途端、鈍い衝撃が一気に下半身を貫いた。 「あ…………っ」 肺の空気まで押し出されたみたいに口を大きく開いて喘ぐ。 ほんの一瞬の間に、とてつもなく大きなものがぎっちりと押し込まれていた。 貫いた衝撃がまるで打ち込まれた楔のようにに私の体を縫いとめる。 「たかはら……っこれ……ああ、や……なに………っ」 痛くはないけれど、そのあまりに圧倒的な感覚に私は怯えた。 混乱しきった口から意味をなさない声がこぼれる。 そんな私をしっかりと抱きしめ、高原は言った。 「名取の中に、俺が入ってるよ」 わかるだろ? と覗き込まれて、私は自分におきていることを理解した。 「………高原、の……?」 「ああ。痛いか?」 「いたく、ない………」 そこから伝わる感覚はまだぼんやりとしている。ただそれが指とはまったくちがう、比べ物にならないものだということだけははっきりとわかった。 「まだ動かないで」 痛みはない。けれども内側から粘膜を押し上げられる奇妙な感覚を飲み込むことができず、ただ浅い息を繰り返して目を閉じる。 こんなにも近く、強く、高原を感じているのに、非現実的な感覚は自分の体が自分のものじゃないような錯覚をおこさせた。すがるようにしがみついて、肩口に顔を押しつける。高原は強く強く、私を抱き返してくれた。 「名取の中、すごく熱いよ…。狭くてぎちぎちで、息をするたびきゅぅって動くの、すげーぞくぞくする…」 唇で頬や首筋をなぞりながら、ごく小さな声でささやく。肌に熱い吐息をふきかけられてたまらず身じろぎすると、挟まったままのそれがひときわ強く存在を主張した。 「くぅん………」 「名取はどんなかんじ?」 「……なんか、すごく……大きくて、くるしい………」 「いっぱいになってる?」 「うん……高原ので……おなかの奥まで無理やり広げられてる、かんじ……すごい……こんな…」 話しているうちに、じんわりと、繋がってる実感がわいてくる。私の中を深く刺し貫いて、閉じようとする花の動きを阻んでいるのは、まちがいなく高原の一部なのだ。 「わたし、高原としてるんだ……」 ため息をつくみたいに、つぶやく。 「そうだよ。名取は俺のをしっかりくわえこんで、セックスしてるんだよ」 「……っ」 「俺と生まれてはじめてのセックスしてるんだよ。こんな足を広げたいやらしいカッコで、シーツに垂れるくらい濡らして、乳首もこんなに硬くして」 「だめぇ……あぁ……っ」 「動いちゃダメって言ったのに、ひっきりなしに俺を締めつけて、もじもじお尻をゆすってもっとシテって誘ってる。いやらしいね、名取のココは」 「や、あ……ちがう、そんなことしてない……っ」 「ふぅん……?」 ずん、と鈍い衝撃が私を押し上げた。 「んあっ」 同時によくうごく指先が、乳首を優しく転がし始める。 苦しいのに、苦しいだけじゃない。乳首から全身に広がっていく快感が、下肢にわだかまる圧迫感をじりじりと変質させていく。 「きつい?」 ゆっくりと、確かめるように中のそれが動いていた。 入り口付近にひきつれるような痛みがかすかに残っていたけれど、そんなものなどたやすく押し流してしまう強烈な感覚に、私はただ声を上げるしかできなかった。 「はぁっ、あ……っ、あ……たかはらぁ……っこれ、あぁ……っ」 子どもみたいに、いやいやと頭を振る。でもやめて欲しいわけではなかった。ただ、自分の中で荒れ狂う感覚をどうすればいいのかわからない。内側のすべての粘膜を一度に擦られる、それは言葉にできない衝撃だった。 「名取の襞の間に俺のが出たり入ったりしてる……。すげーやらしいよ」 手がひっぱられて、まさに繋がっているその場所をじかに確かめさせられる。とろとろに溶けた私の襞の間で、硬い幹がたっぷりとした粘液をまとってゆるゆると動いている。 「やぁ……うそ……触ってるのに……っ……動いちゃやぁ……」 高原の根元のごわついた茂みが近づいては遠ざかっていく。ただそれだけのことが、こんなにもいやらしい。 「すげ……中ひくひくしてるよ。名取」 まだ快楽とは言い切れない、ざわざわとさざめくような感覚も、ぐちゅ、ともぐりこんでは粘液をからめとって掻き出していく音も、そして、鼓膜から入ってくる高原の声も、すべてが私の羞恥心をかきたて、つきあげてくる感覚を明敏にした。 「いや、いや……っあ………っ!」 「……っ、そんなに締めつけちゃダメだって……」 「だって……っ」 気ぜわしい呼吸をくりかえしながら、そっと目を開けて打ち寄せてくる高原の顔を見上げる。 きつく眉をよせて、苦しそうに顔をゆがめて、でもまっすぐに私をみつめている瞳。 「……たかはらも、きもち、いい……の……?」 「ああ。すげーきつくて、しめつけて……気持ちイイ…」 いままでの余裕たっぷりな口調とはちがうかすれた声だった。汗をかきはじめた広い背中に腕をまきつけて、しっかりとしがみつく。胸いっぱいに広がる気持ちに押し流されるまま、つぶやいた。 「………うれしい……」 「ああもう……ちくしょ、ごめん、もう我慢できない」 高原は口早に言い捨てるなり、私をしっかりと抱きかかえて、激しく腰を打ちつけはじめた。 「あ、ああっ、や、あ、あぅっ」 突然体の中に嵐がまきおこったようだった。乱暴とすら言える容赦ない動きで内側から突き上げられる。押し出されるように出てしまう声が自分の耳にもいやらしく、かといって止めることもできず、ただただ翻弄される。 「名取……っ、く……っ」 耳元で乱反射する呼吸の音と押し殺された声。胎内で暴れまくるそれは荒々しくせつなさにもにた熱を生み出していく。今にもバラバラに壊されてしまいそうで怖いのに、繋がって揺さぶられているこの瞬間に滲む甘い幸せを私はどう受け止めればいいのだろう。 「あっ、ああ、たかはらぁ…っ、あぅっ」 汗と汗で滑る体をぶつけあい、誰よりも近くに相手を感じながら、でもどこか届かないもどかしさに身をよじる。 「……っ、よかった……」 高原と、セックスしている。体を重ねて、すべてが絡み合う。揺さぶられる波間であえぎながら声を押し出した。 「うん……? なにが?」 「あっ……たかはらが、最初で……初めてのひとで、よかった……」 体の内側を押し上げてくるそれが、ぐっと突然硬さと大きさを増したような気がした。 「あ……っ」 「なとり……っ!」 奥深くにねじ込むように腰が突き入れられた。浮き上がろうとする体を押さえ込まれ、ぐりぐりと小刻みにかき回される。押しつぶされた芽から生まれた淡い快感が濡れた粘膜を更に熱く疼かせた。 「たかはら……っ、あああっ」 指や、自慰とは比べ物にならないほど、奥深くまで高原の存在を刻み込まれていく。気持ちいいのか、苦しいのか、わからない。ただ繰り返し突き上げられ、満たされる。体の内側でこすれあういやらしい気持ちよさに溺れる。 「あ、あ………ッ!」 「……イク…………っ!」 きつくすがりついている高原の体が、一瞬きつく強張った。かすれた声が耳を打つ。最奥に押し込まれたまま動きを止めたそれが、私の内側でびくびくとしゃくりあげるように震える。思い出したようにゆるく押し込まれる度、私の唇からは甘いため息が漏れた。 突然の嵐はやはり突然に止み、それが高原がイったからだ、と気づくまでにちょっと時間がかかった。 「……ちょっと我慢できずにキツクしすぎた。ゴメン」 汗だくになった高原の顔が降りてきて、荒い息のまま唇が重なった。 ついばむような柔らかいキスがいくつも降ってくる。 ずっしりと大きな体をあずけられている重みが、なぜかひどく嬉しくて、子どもみたいに肩口に顔をこすりつけた。 「ううん……だいじょうぶ、ありがと……」 大きく息をつくたび、まだそこにとどまっている高原を感じる。 入ってきたときの強烈な違和感はかなり薄れ、ただ繋がっているだけで隅々まで満ちているような不思議な充実感があった。 「ホントはもっと時間をかけて感じさせてやる予定だったんだけどなぁ…」 苦笑する高原にどう答えればいいのか、表情の選択に困ってしまった。 いちゃいちゃと何度かキスをして、高原は覆いかぶさっていた体を起こした。 「あ………」 ゆっくりと腰が引かれ、硬さを失いかけたものが滑り出ていく。 ずるりと去り際に擦られる感覚に思わず声が出てしまった。 「おー、結構出たなぁ……」 ぼんやりと見ている間に、手際よく蜜にまみれたゴムが剥がされ、口を縛ってティッシュごとまるめてゴミ箱に投げ捨てられた。 「なんで縛るの?」 不思議に思ってたずねると、高原は私の横に大きな体を横たえながら笑った。 「ん? そのまま捨てるとゴミ箱の中に精液が流れだして後でえらい事になるから」 ほら、と長い腕の中にまた抱き込まれる。下腹部に軽く当たるそれは傾きかけてはいるもののまだまだ大きく硬くなったままで、こんなのが自分の体に入っていたなんて、なんだかとても信じられなかった。 けだるい疲労と、心地いいぬくもりにほっと目を閉じて、私は安堵のため息をついた。 「こら、寝るなよ」 耳元を噛まれた。同時に、指先で薄く開いたままの唇をなぞられる。 「まだまだ夕方まで時間はあるし……名取が気持ちよくなれるまでじっくりやろうな」 うそ、と言いかけた口の中に硬い指が滑り込んできて声が押し戻された。 感じやすい部分を同時に刺激されながら何度も突き上げられ、はじめて男の人で絶頂することを覚えた頃には、窓の外はすっかり暗くなってしまっていた。 |