秘密の夢
【 第4話 】

 はぁ、はぁ、と荒い息遣いが部屋に響いていた。ヒロ兄が私をきつくきつく抱きしめてきた。苦しいけれど、嬉しい。ひきしまったその体が細かく震え、耳をおしあてた胸からはびっくりするくらい速くなった鼓動が聞こえた。
「………気持ち良かったか?」
 かすれた声で、私の肩に顔をうめたままヒロ兄がささやいた。その息遣いが耳をかすめて、さっきの熱の余韻がまだ残ってるのか、思いがけず声が漏れてしまった。
「ぁっ…」
 瞬間ヒロ兄の体がびくり、と波打ち、ふたたび痛いくらい強く抱きしめてきた。
「感じやすくなってるんだな……」
 かすかに声が、震えていた。
 ムリヤリ引きはがすようにヒロ兄が私の肩を掴んで押しやった。
 まだ快楽の靄につつまれたまま力強い抱擁にうっとりと溶けていた思考は、突然現実に引き戻されて、たちまち混乱した。
「やぁ……っ」
 ふたたび抱擁を求めて目の前の体にしがみつく。
「あ!」
 また、きつく抱きしめられて、こんどは首筋に唇を押し当てられた。
「まゆ…………まゆ………」
 呻くようなヒロ兄の声と、熱い息が耳に吹き込まれる。
 さっきの優しい愛撫とはまったくちがう荒々しさで、ヒロ兄の唇と掌が体中を這い回った。まだ敏感になったままの体に再び火が灯る。甘い声でなきながら、私は次なる予感に胸を沸きたたせて、ヒロ兄の意のままにみもだえた。
「ごめん、まゆ」
 休む間もない快楽の波にぐったりした私の上に、裸になったヒロ兄がのしかかってきた。
 溶けて液体のようになったそこに、なにかが押しつけられた。次の瞬間、狭いところをムリヤリ割り開くようにして、ヒロ兄が私の中に入って来た。
「………っ!!」
 自分さえも知らない奥まで一気に突き上げられて、声にならない空気が漏れる。
 鈍い引きつれたような痛みはヒロ兄が動くたびに新たな痛みとなってくり返され、私は唇を噛んで声をこらえるしかできなかった。
「まゆ……まゆ……っ」
 うわごとのように、ヒロ兄の声が降ってくる。
 少しでも痛みが和らぐように、私は必死にヒロ兄にしがみついていた。
 ついさっきまで私の肌の内側で快楽となって渦巻いていた熱が、今度は外側から痛みとお腹の奥をかき回す感覚となって伝わってくる。
(ヒロ兄が、今私の中にいるんだ……)
 そう実感した瞬間、ぞくり、と体中がしびれた。
 ヒロ兄の大きな掌のなかで私のちいさなふくらみが幾度も形を変える。ツンととがった乳首が指先で押しつぶされて、同時にヒロ兄が私を揺すりあげるたび、じわりとお腹からはい上がってくる感覚が熱を帯びてくる。
「まゆ……」
 優しく頬を撫でられて、私はうっすらと目を開いた。
「大丈夫か? まゆ」
 苦しそうな、悲しそうな色をたたえたヒロ兄の瞳が間近にある。
「ヒロ兄、どうしたの? 苦しいの?」
 驚いて尋ねると、ヒロ兄は荒い息のまま苦笑して、私をきつく抱きしめた。
「ちがうよ。……まゆの中が気持ち良すぎて……」
 もっと優しくしてやるつもりだったのに、全然我慢できない。
 かすれた声でそう囁く間も、ヒロ兄の腰は快楽を生みだすためのゆるい動きをやめようとしなかった。
「ん……うれしい……」
 素直に答える。それだけ求められているのだという実感は、痛みを補ってなおあまりある悦びとして新たな快楽の呼び水の役割を果たした。
「まゆ…う……っ」
 呻き声ともに、幾度も名前を呼ばれるたび痛みに混じって体の奥が熱くにじんでいく。
「あぁ……あ…あん! ん……っ」
 いつのまにか、あえぐような呼吸をくりかえし、もっと確かな熱を得るために体が勝手に動きだしていた。恥ずかしい、と思うよりももっともっと切羽詰まった欲望が私を動かしている。痛みは依然して残ってはいるものの、さっきよりも勢いを増した熱が体の奥でうねり、渦を巻いていた。気持ち良くて、じれったくて、夢中で私を翻弄する力強い体にしがみつく。
「だめ……あぁっ! ん……っ、おかしくなっちゃう……っ!」
 押し出されるまま砂糖菓子のように甘ったるい声を上げて、私は生まれて始めての快楽に酔っていた。
 このまま全て溶けだしてしまうような、そんな錯覚すら起こる。
「あ! やぁんっ」
 体中を蕩かしていた快楽が唐突に止み、私を満たしていたそれが引き抜かれた。
 なにが起きたのか考える間もなく体をひっくり返され、腰を引き上げられる。
「ヒロ兄…っ」
 ひやりとした夜気に腫れた花を嬲られて、私はやっと自分が後ろから貫かれようとしているのだと気がついた。
「まゆ……かわいいよ……すごく……」
 ヒロ兄の大きな手が私のお尻を愛おしそうになで、堅くなったまま私の蜜にまみれたそれはぬるぬるとひくつく花の入り口を擦っていた。
「あ……」
 体の奥からじれったい疼きが降りてきて、私はいつのまにかヒロ兄のそれにおしつけるように腰をつきだしていた。
「焦らなくても、あげるよ」
 ヒロ兄の笑いを含んだ声。入り口にくいこむだけだったそれが、敏感になった内壁をずるりとこすりあげて奥に入ってきた。
「あぁんっ!」
 びりびりとしびれるような気持ち良さに悲鳴にも似た嬌声がこぼれてしまう。再び疼きだした鈍い痛みさえその悦びをさえぎることができない。
 自分がこんな声で鳴くなんて、ぜんぜん知らなかった。
「ヒロ兄っ……もう……だめ……だめぇっ!」
 さっきより、もっともっと大きい波に攫われて、私は叫んでいた。
「まゆ……っ!」
 背中からきつく抱きしめられ、激しさを増した腰の動きに、次なる予感が瞬きだす。
 一回一回奥をえぐるようにヒロ兄のそれが打ち込まれるたび、頭の中が真っ白に染まっていく。ため息も声もいっしょくたに漏らして、我慢できずに、重ねられたヒロ兄の手をきつく握り締めた。
「俺もだ……一緒にいくぞ」
 もうこれ以上気持ち良くなることなんてできないと思っていたのに。
 最後の最後にものすごい勢いで体の奥から背中を駆けのぼっていった快楽は、もうギリギリの線まできてしまっていた私をたやすく絶頂に押し上げてしまった。
「あ! いく………っ! あ…………っ!!」
 背中をのけ反らせて、全てを手放した瞬間、ヒロ兄が私の最奥に深々とそれを突き立てて、そのまま勢い良く引き抜いた。背中に熱いものが弾ける。
「まゆ………っ!」
 きつく私を抱きしめたままヒロ兄が幾度か体を強張らせ、その都度蕩けた体の隅々に甘い余韻が広がっていった。