赤いくつ
Written by : 愛良
[3] 目玉焼きの乗ったハンバーグ


 それから何度も私はおじさんと逢った。おじさんは私に小さな鏡やリボンの付いた新しい下着や、ビーズの綺麗なアクセサリー、赤い靴によく似合うエナメルのバックを買ってくれた。その度ごとに、やっぱりおじさんは私の体におちんちんを擦りつけ、白い液体を放出した。ある時はお城でじゃなく、誰もいそうにない草っぱらでやったこともあった。路地裏だった時もあった。
 そんな事が何日も続いたある日、おじさんは私に
「おじさんと一緒に住んだら、美味しいものいっぱい食べさせてあげるよ」
と言った。やっぱり、お風呂に入って、体を丁寧に洗って貰っていた時だったと思う。
 私は即座に頷いた。どんなに色んなモノを買って貰って、帰り際、お菓子を少しずつ貰ったとしても、空腹だけは満たされなかったから。
「じゃ、明日、要るものだけもっていつもの場所へおいで。誰にも言っちゃダメだよ」
おじさんはそう言って、人差し指を唇に当てて、しぃ、という格好をした。私は強く、何度も頷いて
「うん」
と答えた。
「お嬢ちゃんはイイコだね……」
そう言って帰り際、おじさんは私に私にスナック菓子を一袋買ってくれた。私はそれで思わず目を輝かせて
「わぁ」
と言ったのだ。スナック菓子を一袋も食べられるなんて、こんなに凄いことは無い。絶対おじさんと一緒に暮らしたい、と強く強く思った。道すがら、私はそのスナック菓子を貪るように食べた。ちょっとチョコレートの味が付いた、ビスケットのようなそれは、私の物欲を象徴するかのように、儚く口の中へ溶けて行った。

 翌日、私は必要な物だけ持って、いつものショーウインドウの前にいた。必要な物は、おじさんに買って貰った物ばかりだった。
「誰にも言ってこなかったね?」
と何度も念押しされて、私は頷いた。他の子も園の先生も、誰も気付いて無かっただろう。だって、園を出る時は、荷物らしい荷物などいつもの様に持ってはいなかったから。
「じゃあ、行こうか」
おじさんは私の手を引いて、そこから電車に乗って何駅も向こうで降りた。降り立った駅から歩いて約10分くらいの所に、新しく私の生活が始まる部屋があった。

 おじさんの部屋は、案外ボロくて狭かった。お城のような所を想像していた私は少しガッカリしたけれど、それでも色んな物を買ってくれるおじさんは優しかったのだから問題は無いと思った。
「狭くてごめんね。でも、お嬢ちゃんはこれからここで暮らすんだよ」
と言ってくれた。
「そうだ……名前を聞いて無かったね。お名前は何て言うの?」
その時になって初めて名前を尋ねられたけれど、私は何て言えばいいか分からなかった。園で付けて貰った名前はあったけれど、それは自分の名前じゃないとずっと思っていたし、その名前を口にするのもその名前で呼ばれるのも違和感があったからだ。
 私が黙っていると、おじさんは察したのか
「……じゃ、おじさんがお嬢ちゃんの名前を付けてあげるよ……未来ちゃんってどうだい?」
と言ってくれた。
 その当時にしてはとても斬新で可愛らしい響きに、私は一発でその名が気に入ってしまった。まるで、テレビに出てくるような女の子の名前だと思った。
「うん、その名前、好き」
と私が言うと、おじさんは満足げに頷いて、
「じゃあ、未来ちゃんだ。今日は未来ちゃんは何食べたい?」
と聞いてくれた。私はもじもじしながら、
「あのね……ハンバーグが食べたい」
と言うと、おじさんはにこやかに笑って、その日の夜、ファミリーレストランに連れて行ってくれたのだ。それがどれだけ感動したことだったか。
じゅうじゅうと音を挙げる鉄板の上に乗った大きなお肉の塊の上には、黄色い目玉焼きがのっかっていた。オレンジジュースも飲んでいいと言われて、私は目をきらきらさせて、
「本当にこれ、全部食べていいの?」
と訊ねたと思う。おじさんはにこにこ微笑んで
「いいよ。全部未来ちゃんの分だよ」
と言ってくれた。施設でもハンバーグは出たけれど、こんなに大きな塊が出たことは今まで無かった。小さな小さなモノを、取り合うようにして食べただけだったから、私は貪るようにそれを勢いよく食べた。
「そんなに慌てなくても大丈夫だよ」
とおじさんが笑ったので、出来るだけゆっくり食べたけれど、それでもお腹が膨れるまではそれを掻き込むようにして食べていた。……分量が多くて、とても子供が食べきれるようなものでは無かったそれを、私は無理にでも全部食べようとした。おじさんが
「無理して食べちゃう事はないからね」
と言ってくれて
「ほら、もうやめよう。お腹いっぱいだろう?」
と言ってくれるまで、私はそれを一生懸命食べ続けた。半分以上は残ってしまったかも知れない。勿体なくて
「持って帰れる?」
とおじさんに訊ねたら、
「明日はまた別のモノを食べたらいいよ」
と言われて、私はとてもびっくりした様な記憶がある。
 その日、初めて私はご飯を残すという贅沢をした。

 おじさんの家に来て、初めての夜を過ごした日。それは私の破瓜の日でもあった。今までの様に、おじさんは私の体に触り、自分のおちんちんを擦りつけるだけでは満足してくれなかったのだ。
 いつもの様に、おじさんのおちんちんを口いっぱいに頬張って、ちゅっと吸ったり、れろれろと舐めたりしていると、おじさんはそれを途中でやめさせて、私の毛のまだ生えていないつるつるの股間に顔を埋めて舐め始めた。今までパンツ越しに舐められた事はあっても、パンツを脱いで舐められるのは初めてだったので、そのぬるぬるとした気持ち悪さに、どうしたらいいか分からなくなった。身を固くしてされるがままに舐め続けられている私のそこが、充分湿ったかと思うと、おじさんは私の両足首を掴み、大きく開かせ、そこに体を押し分けて入ってきた。今までやってたみたいに、おじさんのおちんちんと私のそこを擦り合わせてぬるぬるさせるだけかと思っていたら、おじさんは
「未来ちゃん、ちょっと我慢してね」
と囁き、私の腰をぐっと抱えて、腰を押しつけてきた。最初、それが何なのかは分からなかったけれど、次の瞬間、私はめりめりと体が軋むような感触と、壮絶な体を割られるような痛みに
「いやーーー、痛い、痛いぃぃぃ、いやーーー」
と叫んでいた。
おじさんは、叫ぶ私の口を大きな手で抑え、暴れる私の体を自分の体で押さえると、ぐい、と腰を深く落とした。めりめりめり、と更に自分の体が裂かれる感じに、私はぐぅ、と声を漏らし、壮絶な痛みに苦しんだ。
「ごめんねー、未来ちゃん。すぐだから……」
おじさんは優しそうな、おもねる様な粘っこい声を出して、私を諭すようにそう言いながら、ぐいぐいと私を貫いた。私は腰を引いて、それから逃げようとしたけれど、おじさんがしっかりと私の体を押さえ込んでしまっているから逃げることも出来ない。燃えるような痛みがそこから体中に広がって、死んでしまうんじゃないだろうかと思いながら、私は涙を流して、早くこの痛みが去ってくれる事だけを願った。
 おじさんは、ふーふーと息を吐き、ゆっくりと腰を動かし、中を堪能すると、本当にすぐに
「ぅぅぅ……」
と呻いて、私の体からそれを抜いてくれた。
それでも私には永遠に近い程長い間に感じられたし、体に無理矢理穴をこじ開けられてしまった様な気がして、自分の足の間が壊れたんじゃないかと思った。涙がだらだらといつまでも流れ、痛みはいつまでも消えなかった。
 口を塞いでいたおじさんの手は、いつの間にかどけられて、頭をずっと撫でてくれていたけれど、私はずっと泣き続けていた。痛みは容易に消えそうに無かったけれど、その撫でられた感触は、何となく気持ちよくて、痛いのか気持ちいいのか分からないまま、泣いたまま、裸のまま、私は眠りに落ちていた。







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